さやか、ちじゅもってきて
あれからさらに1年が経った。俺は遂に言葉が話せる様になり、彩の乳生活は終わりを迎えた(結構悲しい)。
「さやか、ちじゅもってきて」
「はい、梵天丸様。どうぞ。」
「ん。さやか、ここはだれのりょち?」
「ここは美濃ですから…織田家の領地で御座いまする。梵天丸様の生まれた年に、稲葉山城が陥落しておりまする。」
「いま、おだはなにを?」
「今は朝倉氏を討伐する為に出陣しているそうです。」
…第一次信長包囲網の頃か。
「では、いまちちうえはなにを?
」
「殿は今、重臣の中野殿と牧野殿との抗争に頭を悩ませているところです。」
…そこか。取り敢えず早めに元服したいなぁ。俺が牧野の小松城攻めを提案したらどんな顔をするだろうか。いや待てそれは流石にやり過ぎだな。2歳児が牧野小松城攻めなんて言いださないもんなぁ。せいぜい軍記書を読む天才2歳児ぐらいかな。
「さやか、そんしもってきて。」
「そ、孫子⁉︎梵天丸様が読むのですか⁉︎」
「ん。はやくもってきて。あと、なんでもいいからへいほうしょ、たくさんもってきて。」
「兵法書…分かりました。」
「ん、よろしくね。」
そう言うと彩は部屋を出て行った。…?交代で誰か入って来たぞ?
「梵天丸、わしじゃ、父じゃ」
「ちちうえ?どぞ、おはいりください」
「うむ。梵天丸、今日はお前の女中を増やそうと思ってな。お前も大きくなったから彩と蘭(俺の女中)と冬(俺の女中)だけでは足りぬだろう?」
「はい、ふやしていただけるのであれば」
「うむ。ではついてこい。」
そして俺たちはどこかの部屋へ向かっている。父上は教育熱心でまだ1歳の俺に軍記書の読み聞かせをする程だ。しかし、嫡男の俺には甘く大体の俺の望みは叶えてくれる。前も俺に女中を選ばせてくれた。さて、今回はどんな娘がいるのかなぁ。