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4.おうちに帰りたい

「さーて、これからどうしようか?」


 ベンチに座る四人。里麻の膝の上には秀一、右側に真奈美、左側に健太が陣取っていた。


「僕、僕ね、おうちに行きたいの!」


 秀一が里麻を見上げて言う。秀一の動きに合わせて、まだ柔らかい子どもの髪の毛が里麻の顔にふわりと当たった。


「おうち?」

「うん!」

「あたしも帰りたい!」

「俺だって!」


 三人が口々に説明したところによると、家が遠くて帰ることができず、三人はずっとこの辺りをさまよっていたらしい。幼稚園には園バスで通っていたと言う。


「住所、分かるかなぁ?」


 里麻は小さく首を傾げた。もちろん、リクエストには応えてあげたいし、三人を家に連れて行ってあげたい。でも、エドモンド幼稚園の園児は市内のあちこちにいるはずだ。場合によっては隣の市ってこともあり得る。園バスで通っているとなると、里麻にも絶対に連れて行ってあげると言える自信はない。

 でも、それは無用の心配だった。


「分かるよ! タジマスーパーの側だよ!」

「椿町四丁目だよ!」


 と、健太と真奈美が元気いっぱいに答える。

 四丁目までは分からないけど、椿町の場所はだいたい分かる。タジマスーパーも母と行ったことがある、と二人の言葉に里麻はほっとした。ここから歩いて行ける距離じゃないけど、タジマスーパーならバスが通っているはずだ。


「よーっしっ。じゃあ、里麻先生と一緒におうちに帰ろうか?」

「うん!」


 三人が同時に上げた嬉しそうな声が、きれいに重なった。




 最寄りの駅まで歩いた後、里麻と三人はがらがらに空いた平日昼間のバスに乗った。本当は駅までの道にもバス停はあったのだけど、バス停で待っていても、他に客がいなければ乗れないことに気付いて、里麻は早々にぜったいに停まる駅前のバス停を目指すことにしたのだ。

 元々空いていたこともあり、里麻の予想通り、四人が座った一番後ろの席に近寄る客はいなかった。


「次は~、椿町三丁目~、椿町三丁目~。タジマスーパーをご利用の方は、こちらでお降りください」


 バスのアナウンスが入ると、健太が「ここだよ!」と声を上げた。真奈美が紫色の降車ボタンを押すと、ピンポンッと音がして「次、停まります」とアナウンスが流れた。

 秀一は頬を上気させて、里麻の手をきゅっと握りしめた。

 ほどなくスーッとバスが停まり、ドアが開いた。ドア付近にいた四人はいそいそと車外に出たが、それが見える乗客はもちろんいない。運転手は密かに「押し間違いかな?」とつぶやいた。


 バス停の前でぐるりと辺りを見回すと、十メートルほど離れたところに「タジマスーパー」という大きな看板を掲げた店が見えた。里麻は一瞬、そこに向かおうとしたが、考えてみたらタジマスーパーの側に三人の家があるというだけで、別にスーパーが目的地ではない。


「えーっと、みんなのお家はどの辺りかな?」


 視線を下に向けると、にこにこ満面の笑みを浮かべた真奈美が里麻の手を引いた。


「こっちだよ!」


 続いて健太も嬉しそうな声を上げた。


「少し歩くけど、すぐ近くだぜ。ついて来いよ!」

「了解!」


 嬉しそうな三人の声と、少し歩くという言葉を受けて、里麻は秀一を抱き上げた。

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