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クエスト38:ミリシャVS未来視ゲヴォルグ・シュタイン②

 ナフコフの運命を決める副将戦。だからといって私に特別な事が出来るわけではない、特訓の成果を出しきる。それしかないのだから。先行の私は意を決してデッキのカードに手を伸ばす。


(私のデッキはバランスタイプ、強力なモンスターカードはいないけどサイコロの目次第では十分チャンスがあるはず)



ヒツジヤギ【草食獣】

ATK:300

DEF:200

■牧草地を徘徊する草食の獣。近づくと甘噛みしてくる。



ファイティングサル【魔獣族】

★★★

ATK:1200

DEF:800

■格闘術を学んだ猿。そのパンチ力は金網をも貫く



シャークフィッシュ【魚族】

★★★★

ATK:1500

DEF:1200

■大海原を回遊する強力な牙を持つ鮫。陸上では二足歩行で歩く



修羅の太刀【装備】

■名工暁が残したとされる一刀。高い殺傷力を誇るこの刀でも豆腐だけは斬る事ができない。装備したモンスターのATKを+500アップさせる。



竜宮の杖【装備】

■海の底に住む遊女が扱うと言われる杖。タイやヒラメを自由に操る事ができる。ATKを+300アップさせる。



脛蹴り【現実罠】

■攻撃を宣言した相手プレイヤーに対して発動する。



 モンスターカードが3枚に装備カードが2枚か、うん悪くない。でも現実罠はいらなかったなぁ。これ絶対ルク先輩が勝手に私のデッキに入れてるよね……

 それでもバランスとしてはかなり良い方だ、これで文句を言うとバチが当たっちゃうよね。後は……


 私は手元のサイコロを握りこみ念じる。お願い! 良い目出て!

 想いを乗せたサイコロは勢いよくテーブルの上を転がり出た目は4。


(よし! 今の私の手札なら最高の数字だ!)


 それでもいきなり今の手札で最高のカードである星4のシャークフィッシュは出し辛い。先行は攻撃できないので少し弱めのモンスターカードを守備表示で出すのがこのゲームの定石なのだ。


 う~ん、じゃあここは……


「ヒツジヤギを守備表示で、とお前は言うぜ」


「え!?」


 まさにヒツジヤギのカードに手を掛けた瞬間、対面に座るゲヴォルグ・シュタインがそれを見透かしたように声を発する。


「な、なんで分かったんですか!?」


 まるで思考を読み取られたかのように行動を言い当てられた私はただただ驚き対戦中である相手に対して率直な疑問を口にしてしまう。


「その反応は当然だぜぇ。暖かいスープをスプーンですくうって位に当然の反応だ。人はよぉ、自分の常識で測れない物には恐怖する生き物だからなぁ」


 勝ち誇ったような薄ら笑いを浮かべながら肩肘をテーブルにつくゲヴォルグ・シュタイン。


「でもよぉ。簡単な、とても簡単な事なんだぜこれは。単純に分かっちまうだけなんだよ、何万、何十万、何百万と繰り返して来たこのゲームの事ならよぉ。相手がどんなカードを引いてどんなカードを出すかなんてぇのは俺にとって1+1が2とか2+2が5ってくらいに簡単な問題だぜぇ?」


 残念ながら計算は苦手のようだ。

 でもそれを差し引いても噂に違わぬ特殊能力の持ち主だ……予知能力に匹敵する先見術『10秒先の未来が見える男』ゲヴォルグ・シュタイン。


『うぉぉぉぉ!! 凄ぇぜゲヴォルグゥゥゥ! お前に見通せないものなんてないぜぇぇぇぇ!!』


 外からは観客の声が響いて来る。

 確かに凄い……でも。


「じゃあ私はファイティングサルを攻撃表示で場に出してターンエンドしますね」


「ふぁ!?」


 私の行動にゲヴォルグ・シュタイン分かりやすく動揺する。


「ひ、ヒツジヤギのカードを守備表示で場に出そうとしていたんじゃあないのか? そういう目の配り方、そういう手の動き方、そういう思案の仕方だったじゃあないか!」


「あ、はい。さっきまではそうだったんですけど言い当てられてしまったので」


「ふぁ!?」


 先ほどまでの意味深な言い回しから一転、急に挙動不審に目を泳がせ始めるゲヴォルグ・シュタイン。……能力は凄いんだけどなぁ。


『おぉぉぉ! いきなりゲヴォルグの未来視を破ったぞぉあの娘!! やりおる、やりおるぞぉぉぉ!!』


 私の当然の行動に何故か沸く会場。


(このゲームって馬鹿しか参加できないルールでもあるのかな……)


 もしかしたらこのゲームに没頭しすぎて思考回路のネジが外れてしまっているのかもしれない。この大会が終わったら二度とモンスターヴィーゾフのカードに触るのはやめよう、私はそう小さく心に誓う。


「だ、だが試合は始まったばかりだ。気付いていないはずがないよなぁ? 当然俺のターンでも未来は見えるんだぜ?」


 自分のデッキに手を乗せて不敵な笑みを浮かべるゲヴォルグ・シュタイン。確かに相手の、そして自分のカードの未来が見えるというのは大きなアドバンテージに違いない。先ほどはうっかりと口を滑らせてくれたから良かったものの、黙っていればこれほど脅威な能力は他にないのだから。


「予告しよう。俺の引くカードは全て星6つの強力なモンスターカード。攻撃力もお前が出したファイティングサルの2倍はあるぜぇ?」


 ゲーム廃人センチュリオン、冒険者時代に貯めたお金でカードを買い占めたという逸話は伊達ではない。レアな星6つのカードを大量にデッキに組み込む資金力と、それをこの状況下で引いて来るという強い運。


「そして俺の出すサイコロの目はぁ~~~~1だ!」


 ゲヴォルグ・シュタインがそう宣言し、勢いよくサイコロを振る。そして止まった目は確かに……1。


「なっ?」


(なっ? じゃねぇぇぇぇ!! 駄目じゃないですか! なんで得意気にこっちを見るんですか!)


 満足そうなゲヴォルグ・シュタイン。当然のように場に出せるカードはなくそのままターンエンドを宣言する。


 ま、まあ私としてはラッキーだからいいんだけど……なんだか調子が狂うなぁ……


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