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クエスト36:ルク・スラーヴァVS天候を操る少女スノウウェル

 ルク先輩と神のカードを所持するというスノウウェルのデュエルは静かな立ち上がりで幕をあけていた。


「荒くれマングースを守備表示でターンエンドだ」



荒くれマングース(獣族)

★★★

ATK:1000

DEF:800

■思春期のマングースは傷つきやすく脆い。それ故に他者を攻撃する事で自分を守ろうとする。



 重苦しい緊張感の中、先行のルク先輩が定石通り守備表示でテーブルの上にカードを置く。続いて後攻のスノウウェルがサイコロを転がし出た目は2。


「ちぇ〜2かぁ。じゃあ私はこれを守備表示で〜」



ネムツムリ(貝殻族)

★★

ATK:500

DEF:1000

■一日中寝ているカタツムリ。装着している貝は非常に硬い



「で、伏せカードを一枚置いてターンエンド〜」


 ……初手では神のカードは出して来ないのね。まぁサイコロの出目も悪かったし、手札にあるとも限らないけど。

 私を少しホッとする。なにせ、先鋒戦、次鋒戦ともに相手は最初のターンからとんでもない手札を切って来たのだ、序盤だからと安心できるはずもない。きっと先輩も十分に警戒して様子を伺っているはず。それは今の手札を見ても分かる。先輩が最初に出したサイコロの目は5、それならあのカードを守備表示でなら出す事はできたのだから。


 私の視界には先輩の必殺カード、星6つのグレンウイグルがしっかりと手札に来ているのが見えていた。

 早くも切り札を所持している先輩は二度目のサイコロを振る、出た目は6。


(お〜先輩、ナイスサイコロ運! ここはどうするんですか、まだ様子を見ますか、それとも……)


 ドキドキしながら動向を見守る中、先輩が出したカードは……



獄炎鳥グレンウイグル【焼鳥族】

★★★★★★

ATK:2800

DEF:2500

■日傾に空焦げし時現れる幻鳥。その一翼で見る者全てを焼き尽くす火の化身。紅の殺戮者と呼ばれ非常に高い戦闘能力を有しながらも警戒心が極めて高い鳥。



「荒くれマングースに代わってモンスターカード、獄炎鳥グレンウイグルを場に出すぜ!」


(おぉ――グレンウイグル来たぁ――!)


 以前に私自身が磔にされ餌にされかけた馴染み深いレアモンスター獄炎鳥グレンウイグルが場に現れる。ヒーテック山に出た獄炎鳥は結局誰かに退治されたと聞いたがそれでも圧倒的な強さを誇る炎の鳥。その強さはモンスターヴィーゾフのカードにも反映されておりその攻撃力は2800!


「獄炎鳥グレンウイグルの攻撃! 獄炎怪鳥蹴り!」 


グレンウイグルの蹴りはネムツムリの防御を貫きスノウウェルに1800のライフダメージを与える。


「そしてカードを一枚場に伏せてターンエンドだ!」


 よし! 先輩、その調子です!

 上級カードであるグレンウイグルを出し続けにはサイコロで常に5か6の目が要求される。次のターンで破棄のリスクを負ってでも先輩は先行逃げ切りの作戦を取ったという事なのだろう。


「ふ〜ん、クックスターしゃまが警戒していたからどんな戦い方をして来るのか楽しみにしてたのに、意外とフツーでちょっとガッカリかな〜」


 そんなルク先輩のカード捌き見て残念そうに呟いたのは相手のスノウウェル。


「ふん、別にお前を喜ばせようと思ってデュエルしているわけじゃないからな」


「あ〜あ〜、やっぱり貴方も退屈な相手か〜残念。じゃ〜さっさと終わらしちゃお〜」


 スノウウェルは詰まらなそうにサイコロを握ると無造作に放り投げる。出た目は2。


(良かった、またあまりいい目じゃない)


 そう思ったのも束の間、スノウウェルがにこりと微笑みカードをオープンさせる。


「永続魔法発動、密約のサイコロ!」



密約のサイコロ【永続魔法】

■自分の出したサイコロの目と前回相手が出したサイコロの目を合わせる事ができる。この効果は自分だけでなく相手にも有効となる。



「え……」


「ちっ、すでに持っていやがったか」


「そういう事。ほんとに残念だよ〜無策で神に挑んでくるなんて」


 神……!?


「出でよ、天従竜神イヤーパ・アマル!」


 スノウウェルは大きく目を見開き手札の右端にあるカードに手を伸ばし叫ぶ。場に降臨したのは六本の腕と十二本の尾を持つ天空を翔ける竜のカード。



天従竜神イヤーパ・アマル【神】

★★★★★★★

ATK:3000000

DEF:2500000

■神話の時代より天候を支配せし竜の神。

特殊1.相手の魔法、罠で破壊されない。

特殊2.サイコロの目を常時+3



「ちょっ!? 攻撃力三百万!? 」


 桁が三つ違うんですけど!? バランスブレイカーにも程があるだろこのカード! 私はあまりに規格外なカードの能力に絶句してしまう。


(こんなの……勝てるわけないよ……)


「呆気なかったね〜ルク・スラーヴァさん」


 神のカードを出現させ勝ちを確信しているスノウウェル。しかし絶体絶命のルク先輩はどこか余裕のある表情でこう言い放つ。


「勝負が決まる最後の瞬間まで、驕るな、緩むな、侮るな……そんな事もクックスターから教えて貰っていないのか? 教育がなっていないな」


 その言葉にプンプンと怒りながらスノウウェルは反応する。


「むき――! クックスターしゃまを悪く言うな! 負け惜しみなんて見苦しいよっ」


「やっぱりまだまだお子様だな。だからカードの力に溺れる、祈り子は祈り子らしく明日の雨乞いでもしていろよ。ここは大人の社交場、モンスターヴィーゾフの会場だぜ?」


 スノウウェルを煽りに煽るルク先輩。


「う〜、うるさいうるさ〜い! もうやっちゃえ天従竜神イヤーパ・アマル! 攻撃、竜神爆滅砲!!」


 高揚したスノウウェルが攻撃を宣言し、食らったら敗北が確定する三百万の攻撃がルク先輩に襲い掛かる。


「ルク先輩!」


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