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クエスト25:『モンスターヴィーゾフ』ルール説明

 テーブルの上に置かれたカードは全部で6枚、私は1枚1枚その中身を確認して行く。



ヒツジヤギ【草食獣】

★

ATK:300

DEF:200

■牧草地を徘徊する草食の獣。近づくと甘噛みしてくる。



カルガモバード【野鳥族】

★★★

ATK:1000

DEF:500

■稲を狙う害鳥。すぐに仲間を呼ぶ習性があり好物はクッキー。



獄炎鳥グレンウイグル【焼鳥族】

★★★★★★

ATK:2800

DEF:2500

■日傾に空焦げし時現れる幻鳥。その一翼で見る者全てを焼き尽くす火の化身。紅の殺戮者と呼ばれ非常に高い戦闘能力を有しながらも警戒心が極めて高い鳥。



修羅の太刀【装備】

■名工暁が残したとされる一刀。高い殺傷力を誇るこの刀でも豆腐だけは斬る事ができない。装備したモンスターのATKを+500アップさせる。



火炎の息吹【魔法】

■小形竜ドラギスが吐く高熱の息吹。場に出ている草食獣と魚類は全て焼き払われる。



シビレ薬【罠】

■攻撃してきたモンスターに対して発動。2ターンの間は攻撃も守備も入れ替えも行う事ができない。



 カードはその名を模した絵札となっておりとても丁寧に描かれていた。その洗練された出来栄えには思わずため息が漏れる程だ。


「はぁ……凄いですね。こんなに綺麗な絵札なんですね」


 その言葉を聞いたルク先輩は得意気な笑みを浮かべる。


「ふふん、そうだろう。このカードは美術的な価値も高いんだぞ」


「うん、確かにこれならコレクターの人が欲しがるのも分かるかも」


 ルク先輩はますます表情を緩めて続ける。


「そうだろうそうだろう、この獄炎鳥グレンウイグルなんて30万ルーブもしたからな。お蔭でその月のクエスト経営のやりくりが大変だったんだぞ」


「へ~……って、なにナフコフの資金を横領して買ってるんですか!」


「人聞きが悪い事を言うなミリシャ。このカードはナフコフの共有資産として買ったんだ、だから別に俺の所有物というわけではない。まあ税金対策みたいなものだよ」


「そんな堂々と税金対策とか言われても……」


「とはいえカード所有税も安くはないけどな」


 カード所有税とかあるんだ……せちがらい世の中だなぁ。

 

「そんな事よりルール説明してもいいか?」


「あ、はい。お願いします」


 本当にカード大会でお金を稼ぐ事ができるなら、ルールをしっかりと把握しておくことは大事だ。ルク先輩やロボニッヒは慣れていそうな感じだけど私はからっきしの初心者なんだから。


「まずはカードの種類な。大きくは【モンスターカード】【装備カード】【魔法カード】【罠カード】の四種類だ」


 私は用意したノートにルク先輩の話を書きとめる。


「基本は互いのモンスターカードを出し合ってATKの強い方が相手のライフを削れるってベタなルールだな」


「ふむふむ」


「使うカードは全部で40枚。デッキに入れるカードは何枚被っても構わない、そこからカードを6枚引いて1枚だけ『出せる』モンスターカードを場に出すんだ。その後は自分のターンごとに1枚ずつカードをドローして進めていく」


「『出せる』モンスターカード?」


「そう、こいつで決めるんだよ」


 ルク先輩はポケットから小さなサイコロを取り出す。


「モンスターカードの名前の下に★印があるだろう。これはモンスターレベルなんだが1ターンおきにプレイヤーは交互にこの賽の目を振るんだ。そして出た賽の目以下のモンスターカードしか出す事はできない」


「えっと、という事は賽の目が1だとこのヒツジヤギしか出せないって事ですか?」


「そういう事だ。モンスターの星の数は1から7、基本的に星の数が多い程強力なモンスターなんだが賽の目が悪いと最悪一度もモンスターカードを出すことなく負けちまうってわけだ」


「つまりバランスが大事ってことですね」


「そうだな、星1ばかりで固めれば必ず場にモンスターを出す事は出来るが弱い。逆に星の高いモンスターで固めると場に出せない事も多いが出した時には大ダメージを与える事ができる。ここら辺は戦術の問題になってくるな」


 私はルク先輩から言われた事をノートに手早く書き記す。


「ちなみに守備表示で場に出すなら賽の目-1の星数で出す事ができるぞ。例えば賽の目が2だと通常は星3のカルガモバードは出せないけど守備なら場に出せるって具合にな。ただし基本的にDEFはATKよりも低く設定されているし攻撃を受けた差分はきっちりライフポイントを削られるから気を付けろよ」


 人差し指を立てながらルク先輩の説明は続く。


「場に出せるモンスターカードは一体まで。賽の目で6が出て獄炎鳥グレンウイグルを場に出せたとしても、次のターンでもう一度6が出なければグレンウイグルは破棄して別のモンスターを出さなければならないぞ」


 なるほど、つまりいいカードを揃えるだけじゃなくて賽の目にもかなり左右されるって事ね……これなら初心者の私でも勝機があるかも。


「ちなみに破棄したカードはどこに行くんですか?」


「その場で破り捨てる」


「なにその無慈悲なルール!?」


 私は思わず前のめりになる。


「何を言っているんだ。だからこその真剣勝負だ」


「そ、それにしたって数百万するカードもあるんですよね? 苦情とか来ないんですか!?」


「分かっていないなミリシャは。苦労して手に入れたカードが賽の目一つで理不尽に破り捨てられる……そんな一瞬の閃光のような輝きを放つからこそカードに命が宿るんだよ」


 なんだその訳のわからない理論は……でもそのルールがまかり通っているのは少なくともこのカードゲームをやっている人達にとっては普通の事なのか、理解に苦しむけど……


「次は装備カードと魔法カードな。これは賽の目に関係なく何枚でも出す事ができるぞ。ただし相手のライフに直接ダメージを与える効果があるものはないから結局はモンスターカードとのバランスが大事になるな」


 ……破棄される可能性がないだけでモンスターカードに比べると優遇されているように感じるなぁ。


「最後に罠カードな。これは自分のターンの時に場に伏せておくと次に相手が攻撃して来た時に『必ず』発動するカードだ。」


「『必ず』?」


「例えばこのシビレ薬の効果は攻撃してきたモンスターに対して2ターンの間は攻撃も守備も入れ替えも行う事ができない、って罠なんだが何か気づかないか?」


 気づく事? う~ん、とは言われても今ルール聞いたばかりだしなぁ……攻撃してきたモンスターに対して攻撃も守備も入れ替えもできないって、罠としては割と普通なような……ん、入れ替えも?


「入れ替えも……できない?」


「ご名答、感が良いな。そう、例えば獄炎鳥グレンウイグルの攻撃に対して罠カードのシビレ薬を使ったとしよう。すると相手は2ターンの間は獄炎鳥グレンウイグルを動かす事ができないんだ。つまり賽の目の出目がなんであろう倒されない限りは破棄される事も無い、カードをドローしてターンエンドだな」


「えっと、それって何かまずいんですか?」


「雑魚カードならいいけど星6モンスターの時に発動すると2ターンの間は相手の強力な壁になりかねないって事さ。罠カードは強力だが任意での発動はできないから場合によってはリスクにもなるって例だな、特に相手の持ちカードが少ない時なんかは体勢を立て直すきっかけにされるし」


「なるほど、結構奥が深いんですね」


「ちなみに持ちライフは5000な。モンスターカードが場に出せない時はダイレクトに相手のATK分削られるからあっという間に勝負が決まってしまうぞ」


 ルールを聞いている内に段々不安になってくる。運の要素が強いとはいってもやはり戦略のゲームと評されているのは伊達ではない。初心者の私が内容を把握したくらいで勝てるものなのだろうか。


「あの、私にはあまり期待しないでくださいね。頼るようで申し訳ないんですけどこのゲームを熟知しているルク先輩が勝ち抜いて行くほうが現実的だと思うので……」


 不安な心根がそのまま言葉に現れる。そんな私を見ながらルク先輩は首を小さく横に振る。


「そりゃ無理だ。モンスターヴィーゾフの大会は5対5の星取り合戦だからな、俺とロボニッヒで2勝するとしてもあと1勝は誰かにもぎ取って貰わないと困るんだよ」


 な、なんだって――!?


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