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クエスト21:擬人化

「ふぅ、こんなものでいいかな」


 早朝の穏やかな日差しが照りつける中、額に滲んだ汗を拭う。持って来たカゴの中には青々とした野草が大量につまっている。


「これだけあればドラギスちゃんもお腹いっぱいになるよね」


 ……でも、あの竜。ほんとにどうしよう。

 私が早起きして野草を摘んでいるのも、溜息が零れる悩みの種も、昨日リム様が連れて来た飛翔竜族のドラギスが原因だった。引き受けた以上は放っておくこともできない、かといって飼うにはあまりに大きい……騒ぎにならないよう取りあえずはツギハギで縫った布を被せてナフコフの屋根の上で寝泊まりさせているのだがご近所さんにバレるのも時間の問題だろう。


(駆除対象にならない内に山を恋しがって帰ってくれれば一件落着なんだけどなぁ……)


 私はそんな事を考えながら山をおりてナフコフへと出勤する。



※※※※※



「あれ?」


 普段より少しだけ早くナフコフについた私は首を傾げる。昨日まで屋根で寝ていたはずのドラギスが忽然と姿を消していたからだ。


(え? もしかして本当に山に帰ったのかな?)


 ホッとした様な少し寂しいような、両手で抱えたカゴの中の野草を見つめながらナフコフ受付所の周りを見渡す。


(やっぱりいない……よね)


 ううん、これで良かったんだよ。あんな大きさの生き物飼える訳ないし、そもそも食べられちゃう可能性もあったわけだし……リム様には申し訳ないけど討伐依頼が出る前に山に帰ってくれて良かったよ。よし、今日は昨日の騒動で滅茶苦茶になったナフコフ受付所の内装を綺麗に片付けるぞぉ!

 そう自分に言い聞かせながら私は昨日壊された壁の間からナフコフ受付所へと入る。



「あ、おがえりなざい」


 ナフコフの店内に入った私は目を丸くする。目の前で机や椅子を片づけながら声をかけて来たのは緑色の髪をした美しい女性。そしてその長い髪で隠そうにも隠しきれない突出した大きな胸。女の私でも思わず見惚れてしまう程のスタイルをしたその女性は腰布を大雑把に巻いているだけで上半身は裸だったからだ。


「な、な、な……」


 その半裸状態の女性を見て思わず言葉を失う。


「なにしてるんですかぁ――! は、早く服着て下さい!」


 思わず目を背けて自分の着ていた上着を差し出す。

 誰この人!? 修理業者の人? ちょっと暑くなったから作業に邪魔な服を脱いだとか? それにしても倫理観なさすぎだよぉ!


「え、でもわだずきのう服作ってもらいまずだげど?」


 なまりの強い言葉づかいで半裸の女性は自分の腰に結んである布を引っ張る。


「そ、それは外したら駄目ですって! ……って、え?」


 その腰布には見覚えがあった。バラバラの色で繋ぎ合わされた拙い作り……繋目にも統一性がなく裁縫が苦手な人物が作ったであろうその腰布に。


「それって、昨日私が作った……」


「はい、わだずの宝物でず」


 ニコリと笑って答える半裸の女性。と、いう事は……


「ドラ……ギスちゃん?」


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