クエスト15:フレミア・ララジェル
ララジェル受付所に冒険者を集める。その為にはまず現状を把握するのが先決だよね……
「フレミア。今ララジェル受付所が扱っているクエストは何件くらいあるのかな?」
「15……かな」
「15かぁ。ちなみに難度は?」
「C難度が2つ……後はE難度……」
「へ~C難度があるんだ、しかも二件も。やっぱりフレミアは凄いなぁ」
フレミアのクエスト登録検定ランクは【金色】。私よりも年下にも関わらず実務経験は四年を経過しており一人でクエストも受領することができる立派なクエスト受付師なのだ。
ララジェルは元々創設者であるフレミアの祖父がクエストを受領していたのだが最近では代替わりを兼ねてフレミアが交渉を行っている。それでも取って来るクエストの質は落ちるどころかむしろ向上しているのだから驚きだ。【白銀】の私としてとても身近な目標でもありその手腕にただただ感心するばかりだ。
「別に……凄く……ないよ……」
「いや凄いよ。私なんてまだ自分一人でクエストも取って来れないのにフレミアは立派に受付所を仕切っているんだもん」
「私なんて……太陽や……海に比べたら……まだまだ……だよ……」
「それはスケール大きすぎるよ。そこと比べたら誰でも分が悪いよ」
ぽや~とした表情でこちらを見つめるフレミア。多分本気で言ってるんだろうなぁ……
「とにかく良いクエストを扱っているんだから宣伝さえすれば冒険者はきっと来てくれるはずだよ、諦めずに頑張ろう!」
「うん……でも……宣伝……苦手」
指を弄りながら呟くフレミア。確かにフレミアに広告係の役は少し難しそうだ、でも今はそんな事は言っていられない。
「大丈夫だよフレミア、私も手伝うから」
「ありがとう……じゃあ……火の輪……持ってくるから」
そう言ってララジェルの受付所に帰ろうとするフレミアの腕を私は慌てて摑まえる。
「フレミア。火の輪はいらないの、宣伝と見世物は違うから」
「大丈夫……火の輪を通り抜けるのは……私」
「フ、フレミア!? そんな、危ないよ!」
フレミアは本気だ……
「ミリシャは……火の輪を持っていてくれれば……いい……取っ手とかないから……熱いけど」
「フレミア、それ私の方がリスク大きいよ」
あぁ……この子は本当にもう……
「そうじゃないのフレミア。宣伝ってそんな事じゃないのよ。例えばほら、冒険者の集まる町中でチラシを配ったり……」
「ミリシャが……よくやってる……あれだね」
「そうそう」
「冒険者……来てるの?」
「う……ま、まああくまで一例としてね。あと効果が高いのはやっぱり冒険者の口コミだね。あそこの受付所は良いクエスト取り扱ってるぞ~とか、対応がいいぞ~とか」
「サクラ……だね」
「いや違うよ、人聞き悪いなぁ」
「ごめん……ステマ……だね」
「違うよ! 全然ステルスしてないよ!」
一向に進まない話についつい大きな声を出してしまう私。普段は気にならないフレミアのおっとりモードも今回のように切羽詰まった状態では笑うに笑えない。
私はコホンと一つ咳払いを入れてから諭すように説明し直す。
「つまりね、冒険者達の話題になる様な事をすれば自然と噂は広がるものだと思うの」
「心霊スポット……的な?」
「うん、違うよ。私が言いたいのは期間限定のキャンペーンを行ったりとかして冒険者の目を引くような事をしたらどうかなって」
「目を……引く事」
「そうそう」
私の話を聞いた後、珍しく真剣な表情で考え込むフレミア。そしてポンッと手を叩くとララジェル受付所に向かって急に走り出す。
「ちょ、ちょっと、どうしたのフレミア!?」
「待っていて……いい事……考えついたから」
そう言って走り去ってしまうフレミア。私はどうしていいか分からないままその場に取り残される。
(どうしたんだろう急に……)
それにしても口コミか……自分で言っておいてなんだがこの飽和状態のクエスト受付所の中にあって注目を集める事は容易ではない。それこそ何か目玉になるようなクエストが一件でもあれば話は違うんだろうけどなぁ……
そんな事を考えているとフレミアが何かを手に持って嬉しそうにこちらに駆けてくる。
「あ、フレミア。もう! 突然帰っちゃうからびっくりしちゃったよ」
「ミリシャ……もう大丈夫……これで冒険者の注目……引けるから」
息を切らせながらフレミアが持って来たのはライオンが潜り抜ける用の油にまみれた丸縄だった。




