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 不思議なナンバープレートを取り付けているその車を追いかけて行くと、やがて住宅街を抜けて山道へと入って行く。

 そのワインディングセクションの頂上にはヴェハールシティを見下ろす事が出来る展望駐車場があり、観光客にも人気のスポットになっているのだ。

(観光客……なのか?)

 あのガソリンスタンドで出会ったレイジと言う男の様に、もしかしたら観光目的でこの街を走り回っているだけなのかも知れない。

 巡回のパトカーや白バイがあのブレーキランプに気がつかないかな……と辺りをキョロキョロ見渡すマドックだが、あいにく対向車線からやって来るパトカーや白バイばかりでその車の後ろと自分のソルスティスの間に都合良く入って来てくれる事は無かった。


(このまま尾行を続けるしか無さそうだ)

 前を走っているその車は、不思議なナンバープレートを取り付けている黒のクーペタイプのスポーツカー。

 いや、屋根が開いているのでオープンカーらしい。

 レイジから貰った資料を確認したい所だったが、あの車のラッシュの中では少しでも目を離すと見失ってしまいそうだったので端末で情報を警察のデータベースに送るのが一杯一杯だった。

 それにしても、ただブレーキランプが切れている車を見掛けてしまったと言うだけでこんな所まで来てしまった。警察の寮とはもうすでにかなり距離が開いてしまっている。

 こう言うのは交通課の警察官の役目だろうから、展望台まで見送ったら帰ろう……と思いつつソルスティスで付かず離れずの距離を維持して付いて行く……筈だったのだが。


(……ん、スピードを上げた?)

 前に居る黒いオープンカーが、闇に溶け込んで行くかの様にスピードを上げる。

 それと同時に屋根もクローズしたのでクーペモデルの自動車に変形した。

 ともかくスピードを上げられてこのまま逃がす訳には行かないので、その黒いクーペを捕捉して自分もスピードを上げるマドックだが、狭くて見通しの悪いワインディングセクションなのでなかなかスピードを上げる事が出来ない。

 しかも今マドックが乗っているのは普段の捜査で使っているマスタングのパトカーでは無く、マイカーのオレンジのソルスティスなので下手にスピードを上げればこっちまでスピード違反になってしまう。

 だがこのまま道なりに走って行けば最終的には上の展望台に辿り着くので、別に急ぐ必要も無いかと思い直してそのままソルスティスをマドックは走らせた。


(……本部に応援を要請するか……)

 ソルスティスを頂上の展望駐車場まで走らせた結果、マドックは驚愕の光景を目撃していた。

 陽が落ちたこの時間帯でも、設置された多くのライトが駐車場を照らし出しているおかげで安全性と治安の向上に役立っているのだが、そのライトが照らし出しているのはさっきの黒いクーペと……。

(もう1台は……あの車って……)

 車に詳しく無いマドックは端末を取り出し、レイジから貰った情報と照らし合わせながら確認する。

「……あっ」

 思わず声が上がってしまうのも無理は無い。何故ならその黒い車とそれからもう1台一緒に停まっている車は間違い無く港湾作業員の証言、そしてあのガソリンスタンドで出会ったレイジに教えて貰った「右ハンドルのスポーツカー」の2台だったのだ。


 タブレットを取り出し、その車の写真を撮影して警察のデータベースに送ると同時に応援を要請した。

「こちらマドック・フロックハート巡査部長。不審な車を2台発見したので至急応援を要請する。データはそちらに送っておく。場所はガルスジーニョ山の展望駐車場だ。もう少しこちらで監視を続ける」

 応援も要請したので後は向こうにばれない様に監視を続けるべく、マドックはかなり離れた場所から厳しい目つきでその2台の車を見張っていたのだが、それが仇となってしまった。

 突然音も無く、後ろから誰かに引き倒される。

「ぐっ!?」

 何が起こったのか脳の処理が追いつかないが、それでも身体が咄嗟に反応して立ち上がろうとするマドック。

 そんな私服姿のマドックのジャケットの上に、黒いブーツを履いた足が全力で乗っかった。

「ぐぅ……っ!?」


 何が起こったのかやっぱり理解が追いつかないマドックの目に映ったのは、黒髪で眼鏡を掛けているアジア系の男だった。

「こいつ、俺達の事を散々嗅ぎ回っている刑事ですよ」

「へぇそうかい。刑事なら俺達みたいな連中にこうして捕まる事も覚悟してるんだろ?」

 マドックを羽交い絞めにしている後ろの男からはハスキーボイスの声が降って来る。

 この人間達は英語では無い言語で喋っているものの、2030年にもなれば瞬間翻訳機が開発されており、移民の多いアメリカでは特に重宝されている。

 マドックは刑事と言うだけあって、こうして普段からその翻訳機をインカム型で支給されており、シャワーに入る時以外では常に片方の耳に着けておく様にと上から命令されているのだ。

 だからそのおかげでこの連中の会話も分かったのだが、それと今の状況はまた別問題だった。

「丁度良いや、おい、こいつをこのまま拉致るぞ」

「分かりました」

 馴れた手つきで後ろ手に手錠を嵌められ、マドックはあの2台の車の方へと引っ立てられた。

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