表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/125

 刑事と言えばコンビを組むのがお約束、と言われる位にドラマや映画等では良くある話だが、確かにコンビを組んで行動した方が効率は上がる。

 だが色々な事情によってコンビを組む必要が無かったり、今回の様にまだ初動捜査の段階ではそこまで人手が必要では無いので単独での捜査が許可される様な場合もある。

 ニコラスは新規部署の立ち上げで忙しいと言うので、今回はマドックがこの自動車盗難事件の初動捜査を担当する事に。

(明らかに人手が足りないと思うのだがな)

 今回の自動車盗難事件は既に確認されているだけでも20件以上と言うだけあって、明らかに自分1人では人手が足りないだろうと心の中でぼやきつつマドックは署の地下駐車場へ向かう。


 そこに置いてあるのは、前にニコラスがヨーロッパの犯罪組織をフランスの刑事と一緒に追い詰めた時に使用したとされるフォードのマスタングRTRだった。

 今回はマドックがこれを使う事になったので、アメリカよりも道幅が狭いヨーロッパから帰って来たばかりでアメリカの広い道幅の感覚を取り戻す為に少しテストドライブをさせて貰う。

 長期休暇と言っても、マドックは刑事と言う職業故に1週間しか取れなかったのでそこまで長い期間休んでいた訳では無い。

 しかしアメリカを離れていたのは事実だし、自分が居ない間に大きな事件の前兆が起こっていると言う事でいざと言う時の為に肩慣らしの意味も含めてヴェハールシティをパトロールする。


(まずはカーショップの聞き込みから始めるか……)

 闇雲に捜査を進めても得られるものは多くない。

 だからまずは事件に関係のありそうな場所から捜査を進めるのが基本中の基本だ。

 署から程近いカーショップに向かい、そこの店員に話を聞いてみるが……。

「……ああ、そうなの?」

 そのカーショップの店員はアジア系の怪しい集団についてはまるで知らないと言うので、マドックも次のショップに向かう。

 その後も何件か聞き込みを続けてみるものの、アジア系のそうした集団の情報は得られないままであった。


 そこでふと、マドックは自分がパトロールに向かう直前にニコラスがこんな事を言っていたのを思い出した。

(そう言えばあいつ、あの写真は港湾区域で撮影したって言ってた気がするな)

 ウォーターフロントの都市であるこのヴェハールシティは、その立地条件から港も非常に広く建造されている。

 となればその港には監視体制が敷かれているとは言え、監視の目が行き届かない区画も存在している訳だ。

(監視が行き届かない事自体が良くないんだが、どうしても人の出入りが多い場所になるとなかなか目撃情報も得られないからな……)

 人間の目から入って来る情報、そしてその情報を記憶出来る脳のキャパシティには人それぞれで限度がある。

 マドック自身は記憶力は悪く無いと自負しているものの、人間である以上限度はやっぱりある。

(盗まれた車の行き先が分かっていない以上、国外に流される可能性もあるからそっちの方にも聞き込みをしてみるか)

 少しでも事件解決の手がかりの可能性があるならば、それは当然捜査範囲になる。


 と言う訳で港湾区域へと向かったマドックは、まだ昼過ぎで人で賑わう埠頭へと向かった。

 人で賑わっていると言っても様々で、観光にやって来たクルーズ船の乗客も居れば色々と大きな荷物を運んでいる屈強な男達の姿もあるので見てて飽きはしない。

 埠頭の駐車場にマスタングを停車させ、誰に聞き込みをするかを見定めるマドック。

(埠頭で日常的に働いている人間が良いな)

 それならば聞き込みをするのは港湾作業員の人間達が最も適しているだろうと言う事で、マドックは手の空いていそうな作業員を見つけて声を掛けた。

「ちょっと良いかな?」

「あん、何だよ?」

「ヴェハールシティ警察の者だ。聞き込み捜査中なんだが、少し時間をくれないか」

「警察……?」


 その作業員は不思議そうな視線をマドックに向ける。

「何かこの辺りで事件でも?」

「この辺りでは無いんだが、最近町の至る所で車が盗まれる事件が多発しているんだ。種類は高級車からスポーツカーまで様々なんだけど、今は捜査線上にこう言う連中が浮かび上がって来ているんだが、見覚えは無いか?」

 ダブルボタンのジャケットの内側からニコラスに貰った写真を取り出し、作業員に見せてみる。

「んー……分かんねえな」

 作業員の男は写真を見つめたが、首を横に振って写真をマドックに突き返した。

「そうか……」

 だったら他の人間に聞いてみるかと思い、その後も手の空いている作業員を見つけてはマドックは声を掛けて行く。

 盗んだ車を解体して船に積み込んで運び出す事も考えられるからこそ、こうしてここまで色々と聞き込みをしに来たのだ。

 するとその努力が実ったのか、それっぽい証言を作業員の1人がしてくれた。

「あー……この人達かどうかは知らないけど、5日位だったかな? 僕が作業を終えて帰ろうとしてた時に、2台のスポーツカーに乗った連中がこの近くで何かを話し込んでいたよ」

「スポーツカー……?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ