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『あたしの会社もようやく上場する事になったから、そのお祝いパーティも含まれているのよね』
ニコラスが組織の事を調べまくって、気がつけば土曜日。その日はニコラスの彼女のルイーゼが例のパーティーに出席する日であった。当日になって出発前の連絡電話をニコラスに入れて来たルイーゼは、そんなセリフを電話の向こうで吐きながらこれから出発する事を伝える。
『何かお土産とかこれから買って行くから。それじゃあね~!』
そう言って電話を切ったルイーゼがいそいそとパーティーに行く為に鼻歌でも歌っているんだろう、とニコラスは思いながらも今日も仕事なので気は抜けない。
一般的に警察官は土曜日も日曜日も祝日も関係無い。毎日このヴェハールシティをパトロールして、揉め事があればその中に割って入ったりもするし、泥棒や強盗が居ればそのつど追いかけて捕まえて行く。
そうして警察官が活躍するからこそ、この街の平和が守られていると言って良い。
事実そうやってヴェハールシティポリスに勤めて長いニコラスは毎日を過ごして来たので、今ではすっかり生活の一部として定着してしまっている。だがそれはこの街の刑事になった自分の運命であるとも考えているので、特にそれを苦だと思った事は無い。
しかし、それ以外にもニコラスの生活の一部として定着している習慣があった。それは前にティアナに話した様にプールで泳ぐ事もそうなのだが、彼の様なアメリカの警察官になった者だけに与えられる特権がある。
それは何かと言うと……。
(今日はチョコレートドーナツでも食うか。疲れた時には甘い物が1番だ)
たっぷりチョコのかかったドーナツを頼もうと、ニコラスは遠くに高層ビル街が見える場所のダンキンドーナツにマスタングのパトカーで訪れた。
(ここは意外と週末で、その上昼間でもすいているから穴場なんだよな)
警察官限定で、アメリカチェーンのダンキンドーナツと言う企業が始めたのが「制服とパトカーでショップに来店した場合に限り、ドーナツを値引きするかもしくは無料」と言う素晴らしいサービスだ。
何故こう言うサービスを行う企業があるのかと言うと、やはりアメリカは色々な国からの移民が集結して出来た大国である為に、犯罪大国としても有名であるのは世界中が知る所だ。そんなアメリカにあるこのヴェハールシティも例外では無いので、こうしてダンキンドーナツがヴェハールシティにも出店して来た。
警察官がこうしてドーナツを食べる為に店の中に居る事で、強盗の防止や犯罪の防止に繋がると言うダンキンドーナツ独自の戦略の1つなのである。
勿論ニコラスは四六時中ドーナツばかり食べている訳では無く、たまにバーガーキングでハンバーガーも食べるしスターバックスでコーヒーだって飲んだりするし、夜のバーに行く事だってあればタコベルでタコスを食べたりもする。
しかしダンキンドーナツがこうして今ニコラスが居る店舗では、ドーナツが無料のサービスをしているので自然とお金をかけずに食べられる場所をチョイスした。別に給料日前には何時も金欠と言う訳では無いが、やっぱり貰える中から使えるお金も限られている為にこうして食費を抑える事も必要になって来る。
(栄養も考えないといけないから、結構その辺りに気は使うんだがな……)
そんな事を考えながらチョコドーナツを頬張っていると、自分のスマートフォンにティアナから連絡が入った。
「もしもし?」
『あ、もしもしニコラス? 実はこれから私、パーティーに潜入しようと思うの』
「パーティー?」
女達がこぞってパーティーに行く日だなー、とニコラスは思いながら話の続きを聞いていたのだが、その内容はニコラスを焦らせるには十分な物であった!!




