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「ここまで聞いてたなら大体予想はつくと思うけど、それでもはっきり言った方が良いわね。それは警察関係者が何人も内通者として存在していたのよ」
「そいつは穏やかじゃ無いな。もしこのアメリカでもそうだったとしたら……」
「こっちの動きは筒抜けって事になるわね。最も、その組織の人間達はこっちに来たばかりみたいだから今回の銀行強盗でも失敗したみたいだし。私だったら、この辺りで一気にリーダーを逮捕するまで行くと思うわ。下手に体勢を立て直されたら厄介だし、この街の警察関係者がヨーロッパの巨大犯罪組織の犯罪の片棒を担いでいる様な事態になったら貴方だって同類に見られるかもしれない……でしょ?」
そう問い掛けられ、ニコラスは勿論だと首を縦に振った。
「ああ、そうだな。俺はこの街が出来た時からここに住んでいる人間だ。いわば俺はこの街が発展して来たのをこの目でずっと見て来ているから、この街は自分の子供みたいな街だと思っている。それにこの街の警察を使ってそんなバックボーンが出来たら、新しいこの都市が瞬く間に犯罪都市になってしまう。そんなのは死んでも御免だね」
「それ程までにこの街が好きなのね。分かった、そう言う思いだったら全面的に私も協力するわ」
すでにそのヨーロッパの人間達にはこうして銀行強盗事件や警察への殺人未遂等と言う大きな犯罪まで起こされているので、徹底的に潰すなら確かにまだ被害が大きくなっていない今がチャンスと言えるだろう。
その前に、ティアナへの質問はまだ後1つ残っている。
「それじゃ次の質問で本当に最後だな。あの港での偽取り引きの時、スナイパーを倒したって言う事を君は無線で言っていたけど……どうやって居場所を突き止めて、どうやって倒したんだ?」
その質問に、ティアナはその時の状況を思い出しながら「あー……」と小さく頷きながら説明を始める。それは彼女の特技を活かした戦い方でもあった。
「あの時……私は貴方達が苦戦しているって言う話を聞いて、何で苦戦しているのかと言う事を知りたかった。そしてその理由が分かった時、その苦戦している原因を作っている人間の事も私は良く知っているのを思い出した。その人間も一筋縄じゃ行かない相手だからね。無線から聞こえて来てたんだけど、スナイパーにあの時は貴方を含めた警官隊が苦戦していたんでしょ?」
それを聞いて、確かに苦戦して居たその情報は無線で共有されていた事をニコラスも思い出した。
「ああ。それでいてもたっても居られなくなって、あの戦場となっている港湾区域の中に入って来たと言う訳か?」
「そう言う事。我ながら少し無茶だったと思うわ。そこは少し反省してる。でもスナイパーって聞いて、スナイパーで1人恐ろしい位の精度を誇る人間があの組織に居る事を、私達パリの警察でも情報をキャッチしていたから。あの組織が関与しているとなるとこれはもう間違い無いと思ったし、対処出来るのはそのスナイパーの事を知っている私の方が良いと思って……気がついたら自然とあの見張りの警官の元から逃げ出し、足が港湾区域の中に向いてた」
淡々と語るティアナだったが、言葉尻ではどこか興奮しているように思えなくも無い。
恐らくその時の事を思い出して自然とアドレナリンが脳から出て来ているのだろう、と話を聞きながらニコラスは思っていた。
「そしてその港湾区域の中でフリーランニングを活かして、なるべく戦闘に巻き込まれない様にして進んで行った私はそのままそのスナイパーを探した。すると1つの倉庫の上でそのスナイパーを見つける事が出来た。そのスナイパーの名前はエディト・ベルナルディ。組織の中では珍しい女のメンバーよ」
「女のメンバーもどうやら居るみたいだな。今回逮捕された銀行強盗団のグループや、港のその犯人グループの中にも数は少ないけど何人か女のメンバーが居るって報告も上がって来ているし」
ニコラスは女のメンバーと戦っては居なかった筈だったが、自分を狙っていたスナイパーがまさか女だったとは想像もしていなかった正体であった。
「それで、私はその背後から接近して一気にフリーランニングで倉庫の上まで行き、狙撃に夢中の彼女に襲い掛かって追い払う事が出来たって訳。凄くびっくりした顔をしていたのは今でも忘れないわ」




