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そんなニコラスのウィンクはクールな性格らしいティアナにやっぱり華麗にスルーされ、次の質問に移る事にした。
「えーと、それじゃあ2つ目か。その2つは君が協力してくれた港の偽取り引きの事についてなんだがな。これは単刀直入に聞きたい。どうしてその偽の取り引きがあの港で行われると知っていた? その情報をどうやって入手したのかが俺には非常に気になる所なんだがな」
そこで一旦言葉を切り、さっきティアナが取り出したSDカード入りの小さなビニールをニコラスは手に取って、まるで自慢の為に見せ付ける様に彼女の前に掲げる。
「このSDカードから情報を仕入れたとなれば時間軸が合わない。あの銀行で殺された人間がそんな計画を立てられる筈が無い。だって俺達があの銀行強盗団を逮捕したり射殺したりしなければその偽取り引きが計画される事も無かった筈だからな。でも、あの時君がノートパソコンに映し出して来た偽取り引きの情報は間違い無く本物だった。そうなると、その偽取り引きが計画されたのは少なくともあの銀行強盗が行われた後と言う事になるからあの人質がその偽の取り引き計画を立てる事は不可能。となればこの情報の出所を知りたいと思うのは当然だろう?」
若干薄い笑みを浮かべながらニコラスがそうティアナに問い掛けると、彼女は先程のニコラスと同じ様に苦笑いを漏らしながらその質問に答え始めた。
「それはホテルのあのフリーランニング仕込みの大ジャンプからの続きね」
「あのジャンプのか? あの後の話になるのか?」
「そうよ」
どうやら、あのジャンプによって逃げられてしまった後の話としてその情報の入手ルートに関する話が繋がっていたらしい。
まさかの展開に、ニコラスは半ば急かす様にして彼女に続きを求める。
「そ、それであの後どうしたんだ? どうやって情報を手に入れた?」
「まぁ落ち着いて。そんなに急かさなくても私はちゃんと答えるわよ。……それで、私があの偽取り引きの情報を手に入れる事が出来たのは一言で言ってしまえば偶然ね」
「偶然?」
「そう、偶然。要は盗み聞きしてしまったのよね」
「盗み聞き……」
何とも良くない単語が出て来たが、もしそれが本当なのであれば彼女はどうやって盗み聞きが出来たのであろうか?
「何故、と言う顔をしているわね。私がどうして盗み聞きをする事が出来たのか。それはあのホテルからジャンプした後に適当にビルからビルへジャンプして行って地上へと下り、そのままほとぼりが冷めるまで何処かで時間を潰そうかと思っていた時の事だったわ。地上へと下りて路地裏を通り、そのまま街中を歩いていると何処かで見た顔を見つけたの。その顔は私が今追いかけている犯人グループの幹部の顔だったわ」
偶然と言う物はどうやらニコラスが思っている以上に凄い物の様だった。
「幹部だと? どんな奴だった?」
「体格が良くて、茶髪の髪の毛をしていて貴方達アメリカ人とはちょっと違う感じのヨーロッパ系の顔立ち。忘れもしないわ。だってその幹部の顔写真は指名手配のプロフィールリストに載っている顔で、私も何度も見て来ているからね」
だがその茶髪でガタイが良い、と言う情報を聞いたニコラスの顔つきが驚きの物に変わった。
「1つ聞くけど、その男は顔にキズがある男では無かったか?」
「ええ、あるわよ」
あっさりとティアナは答えるが、ニコラスにとっては非常に悔しい思いをさせられた相手にどうやら間違いは無さそうであったので険しい顔つきになった。
「……どうしたの?」
「そいつ、もしかすると俺が取り逃がしてしまった人間かもしれない。いや間違いなくそうだろう。そいつが首に赤いスカーフを巻いていたのを君が見ていたなら間違い無い」
「ええ、巻いていたわね」
その答えに、ニコラスは自分の悪い予想が当たってしまったと歯軋りをした。




