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そう、男が逃げ込んだ路地裏……この辺り一体の路地裏はその殆どが行き止まりに繋がっている。ビル街が密集している為にオフィスビルがどんどん建てられて行き、結果として路地裏の殆どがビルの壁で塞がれている行き止まりになっているのだった。
勿論ニコラスは15年前に出来たばかりのこの街で生まれ育った訳では無いが、その15年前の17歳の時に丁度彼は、この新興都市ヴェハールシティの高校に親の仕事の都合で生まれ育ったアーカンソー州から転校。その後そのままヴェハールシティの大学に進学し、そのまま刑事となった今でもこの街に住んでいる。
なのでシティが出来た初年からこの街の事を知っているだけで無く、大学生の頃は大学受験から解放された事で色々なシティの場所を巡る事が出来て土地勘も養われていった。
そうして警察学校を卒業し、そのまま制服警官から刑事になった今でも勿論住んでいるこの街は自分にとってのホームグラウンドである。制服警官の頃からパトロールして様々な道を覚え、刑事になった今では聞き込み調査をする事も良くあるのでこの街の事であれば自分が市警察の中でも1番良く知っていると自他共に認められている。
そんなニコラスだからこそ、この街で犯罪をする奴の事はどうしても許せなかった。
シティが出来た最初の年からこうやって住み続けて来たこの15年間の思い出が詰まっているこの街を踏みにじる様な事をする様な連中を、この街の人間として生きている今の自分が到底許せる筈も無い。
だからこそ、その執念で今まで幾つもの事件を解決して来たと言う功績が彼にはある。今回もその「街を守りたい」と言う執念があるからこそ、こうして路地裏に逃げ込んで行ったあの強盗団のグループの1人を追い詰める事が出来た。
「そこまでだ、観念するんだな」
予想通り、路地裏の行き止まりに追い詰められて行き場を失った強盗団の男の元にニコラスがハンドガンを向けながら歩み寄って行く。
「……」
それでも、男はまだ諦めていない様でどうにかして逃げる手段を考えているオーラがニコラスにはひしひしと伝わって来ている。
「何を考えているのか知らないが、この街の警察から逃げられると思わない方が良い。特に俺からはな。見た所そっちはこの街の事を良く知らないみたいだし、土地勘も無さそうだ。そうで無かったらこんな所に逃げ込んだりはしないからな。さぁ、大人しくしておけっ!」
しかし、男はそこで意外な行動に出る。
「……あっ! おい、助けてくれ!!」
「え?」
ニコラスの後ろに向かって手を振って大きな声で助けを求めるその男の姿に、ついニコラスは後ろを振り向いてしまう。
その瞬間、ニコラスの右腕に大きな痺れが走った。
「ぐおっ!?」
痺れの後に聞こえて来たのは自分のハンドガンが地面に落ちる音。男はニコラスの気をそらして、気がそれたその瞬間にニコラスのハンドガンを自分のハンドガンで弾き飛ばしたのであった。
そして男は行き止まりの袋小路になっているビルの壁に向かってジャンプ。と言っても真正面の壁にジャンプするのでは無く、まずはニコラスから見て右の壁に向かってジャンプしてその壁をキック。行き止まりのビルの壁には四角い窓が取り付けられており、その窓の中の1つだけが開いていた。
何とか潜り込めそうな大きさだった為、ちょっと高かったが男はその壁キックを駆使して窓枠に飛びつくと身軽にその穴を潜り抜けた。
「なっ!? く、くそっ!!」
ハンドガンを拾い上げる間も無くニコラスは男の後を追って壁キックをしたのだったが、コートを着込んでいるので動きにくい上に壁キックをした足のパワーが足りず、窓枠に飛びつく事が出来なかった。
「くうっ……!」
そのまま下に落ちたニコラスだったが何とか転がって受け身を取り、怪我は免れた。しかし……。




