17.突然の乱入者
「うおああああっ、何だこりゃ……!!」
「ぐぐ……くそっ!」
撃たれた痛みと閃光のショックで成す術も無い二人を呆然と見る事しか出来ない俺の耳に、いきなり誰かの声が聞こえて来た。
「こっちだ、その車で私の車に着いて来い!!」
「えっ……え?」
「良いから早く!!」
聞き覚えの無い男の叫び声は、どうやらフレイザーとリーキーのディアブロの後ろから聞こえて来ているらしい。
何が何だか分からないが、とにかく助けられているのだと理解した俺は即座にヴィッツに乗り込んですぐにその声に向かって発車。
未だに苦しんでいる二人の殺し屋を横目で見ながら、俺は目の前に現れたシルバーのE320ワゴンの後ろに着いて港を抜ける事に成功した。
シルバーのベンツと言えば、型式や年式は違えど俺の殺害を依頼したエイアルを思い出すので、もしかしたらこのE320ワゴンのドライバーも俺の命を狙っているのかも知れない。
しかし、今は助けられた事に感謝しつつそのE320ワゴンのテールにくっ付いて大阪市内へと向かうのだった。
◇
「ここまで来ればもう大丈夫だ」
大阪市内の人気が少ない場所まで先導された俺は、謎のE320ワゴンのドライバーにやっとお目に掛かる事が出来た。
俺よりやや歳上位かと言う顔付きに、銀色の髪の毛を短くカットしている若い男。
水色のシャツの上に暗い金色のジャケットを羽織り、灰色のボトムスを履いているファッションの見た感じは何処にでも居そうな風貌の人間だが、どうしてこの男は俺を助けてくれたのだろうか?
「助けてくれてどうもありがとう……でも、あんたは一体?」
「心配するな。少なくとも、今は君に敵対する者では無い」
「今は?」
だったら何時かは敵対する時が来るかも知れないって事か、と考える俺に対し、E320ワゴンのドライバーの男は自分から名乗る。
「私はエルトル。ある人物から頼まれて、君を守る様に言われたんだ」
「ある人物って……まさかそうやって守るとか言っておきながら、俺の命を狙う傭兵だったりしねえだろうな?」
今まで散々人間の豹変を見て来ただけあって、このエルトルって男の事もいまいち信用し切れないのが現状だが、そんな俺の気持ちを分かったかの様にエルトルは苦笑いを浮かべて頷く。
「違うよ。だが場合によってはそうなる可能性もあるかも知れないってだけだ」
「……」
やっぱり何処か信用出来ない。
そりゃー助けてくれたのは恩に着るが、この男が俺の命を狙う立場になったらそれこそもう誰も信用出来なくなってしまう。
そんな懐疑心しか持っていない状態の俺に対して、エルトルはこう提案した。
「まぁ、信用出来ない気持ちも分かるが……君は今から東京に戻るんだろう? だったら私に着いて来い。安全な場所まで案内するから」
「裏をかくってのは良く分かんねーけど……ともかくあんたは俺の事を守る様にって言われたんだろう。だったら俺の事もそれなりに調べてある筈だから、俺の命を狙っている連中の事も分かってんじゃねーのか?」
物事は事前にどれだけ情報収集出来るかが重要なのだが、それについて目の前のこの男に問いただしてみるとこんな答えが帰って来た。
「確かにそれなりには調べてあるが、勿論教える事は出来ない。これは私の依頼主との約束なのでね。……まあ、一言だけ言えるのは……君が相当危なっかしい事態に陥っているって事だな」
「だからそれを教えて欲しいんだよ!」
ドンッとテーブルを軽く右手で殴り付けると、衝撃でコップの水が数滴テーブルに飛んだ。
しかし、それを見てもエルトルは冷静である。
「無理だね。これ以上の事は話せない。とにかくそのチャーハンを君が食べ終わり、私がこのうどんを食べ終わったら安全な場所まで移動する。それだけは保証しよう」
「……」
やっぱり途中まで大人しく付いて行くフリをして、何処かでバックれちまおうと考える俺は、まず目の前のチャーハンに視線を戻して食べ切る事に集中した。
◇
「ボス……すみません、奴を後一歩の所まで追いつめたのですが、邪魔が入りました」
やっとの事で耳鳴りと目の痛みから解放されたフレイザーとリーキーは、大阪市内で自分の部下達「バイパー・チーム」と一緒にボスに連絡をしていた。
『御前達には期待していたのだが……その為に1000万の依頼料まで払っているのだぞ。それだけの大人数で仕留められなかっただと?』
何とか怒鳴るのだけは堪えているボスの、怒りに満ちた声が電話の向こうから聞こえて来てフレイザーは身震いする。
そんな彼との会話をスピーカーホンで聞いていたリーキーが、フレイザーの手からスマートフォンを奪い取る位の勢いで奪い取って手短かに応答する。
「ボス、リーキーです。心配は要りません、俺達にはまだあの男の居場所は掴めています。東京方面へと向かっていますので、アリオス達に声を掛けておきます」
だが、それでもボスの怒りは収まりそうに無かった。
『結果を出せ。こちらからの指示はそれだけだ。御前達とはそれなりに長い付き合いだが、これ以上しくじる様だと今後はもう別の傭兵に依頼を掛ける。奴を仕留めるまで顔も見たくないわ!!』




