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15.朝メシ位はゆっくり食いたい

(……えっ)

 記憶違いで無ければ、荷物からはみ出ているパスケースに入っているのは昨日俺を襲って来た、あのフレイザーの写真である。


 周りを窺って、スッとそのパスケースを手に取って見てみると……やっぱ間違い無え。

(昨日の今日だって事もあるけど、銃までぶっ放して襲って来たあいつの顔は忘れたくても忘れられねえしな。ここは他の席に移動しよう)

 フレイザーの関係者がわざわざ俺の隣に座って来ると言う事は、俺に対して何かしようとしているのは間違い無えだろう。

 それこそ、水や海鮮丼にコッソリ毒でも入れられたらたまったもんじゃ無えから、パスケースを戻した俺は席を移動しようとしたのだが……。

(あ、もう満員じゃねえかよ!)


 既に満席となった店内は移動が無理だと分かった上、食中毒の危険があるのでこうしたメシ屋ではテイクアウトもなかなか受け付けてくれないのが現状だ。

 しかもその時丁度海鮮丼が運ばれて来たので、俺は奴が席を外している今の内に食べ切ってしまうべく急いで箸を進める。

 せめてメシの時だけはゆっくりしたかったのだが、隣に座っているのが危険人物だと分かってしまったからにはそうはいかない。

 海鮮丼の味なんてこれっぽっちも分からないが、なかなか食い切れないのでボリュームがあると言うのは理解出来た。


 そう言えば海鮮丼が運ばれて来た時、店員が「兄ちゃんは若いから特別サービスで大盛りにしといたで!」と言っていたのを思い出した。

 関西……特に大阪は人情の街と言われているが、今の俺にとってはその人情が逆にアダとなってしまっている状況だ。

(くっそ、量が多いのが何時も何時も良い方に働くと思ったら大間違いなんだよ!!)

 心の中で文句を言いつつも、隣に戻って来たあの金髪の野郎に悟られない様に海鮮丼をそのまま水で流し込みながら完食。

「ごちそーさん!」

 俺はそのままレジへと向かい、釣りはいらないと言って支払いを済ませてさっさとヴィッツへと戻る。

 だが、そこで驚きの光景を再び見てしまった。


(こ、この車は!?)

 絵の具の青色をそのままぶちまけた様な、ちょっと濃い目の青色に低いスタイリングが印象的なその車に、俺は記憶が一気にフラッシュバックする。

 最初に大阪までやって来た時、駅の前でフッと見かけたランボルギーニディアブロである。

 こんな車がそうそう街中を走っているとも思えないし、さっきの客の一人と隣の金髪のあいつとの会話からして「外の凄い車」とはこれに間違い無いだろう。

(こんなのに追い掛け回されたら俺は逃げ切れる自信なんか無いぜ。ここは素早く移動しちまおう!)

 昨日のフレイザーは赤いアルファロメオに乗っていたし、パスケースの件もあるし同じイタリア車だけあって全く無関係では無い筈だと思いながら、俺はヴィッツを発進させた。


(とにかくここから逃げなきゃな!)

 あの金髪の野郎から少しでも遠ざかるのが大事なんだと自分に言い聞かせつつ、東京に向かう為に俺は高速道路へ乗る……筈だったのだが、その前に思わぬ襲撃が。

「おらああああああっ!!」

「っ!?」

 白昼堂々、俺のヴィッツの前に雄叫びを上げながらいきなり飛び出て来た人影。

 その人影は全速力のダッシュからジャンプし、ヴィッツのフロントガラス目掛けて右手の何かを叩き付けて来た。

「うおっ!?」

 その飛び出て来た人影に俺は見覚えがあり過ぎる……どころか、こいつは六甲山で襲って来たフレイザーじゃないか!


 右手に持っているのは、あの時俺に向かってぶっ放して来たコルトディフェンダー。

 それが目に入った瞬間、俺は咄嗟にフルブレーキを掛けて奴をボンネットから振り落とす。

「ぐおおおおおお!?」

 六甲で見た様な光景が再び目の前で展開され、まるで坂道を転がって行くジャガイモやミカンの如くフレイザーの身体がゴロゴロとアスファルトの地面を転がった。

 奴のそんな醜態をバックミラーで見つつ、アクセルから足は離さずにそのまま全開で港の出口を目指す。

(誰だよ、日本が世界一安全な国だなんて言ったのは!?)

 銃が普通に出て来るなんて、これじゃアメリカとかヨハネスブルグなんかと変わんねーじゃねーか!!

 この騒動から逃れる為にはいっそ国外逃亡するしか無いかも知れないと考えつつ、俺はヴィッツを走らせる。


 しかし、そんな俺の目の前に更なる絶望的な光景が。

「……はっ!?」

 フレイザーの襲撃で一部がヒビ割れて蜘蛛の巣状になっているフロントウィンドウから見えたのは、明らかに道を塞いでいる黒いハイエース二台。

 工事の人間かも知れないと考える俺だったが、だったら通行の邪魔になる様な停め方はしないだろうと思い直す。

 案の定、そのハイエースから黒尽くめの武装した集団が俺のヴィッツに向かって銃撃を開始して来たのだ!!

「うおうおうおっ!?」

 良くそんな展開を予想出来たもんだなぁ、と俺は今までの人生に感謝しつつ、銃撃から逃れる為に脇道へとヴィッツを滑り込ませる。

 ここまで来たら明らかに警察に駆け込むレベルなのだが、そうなると今度は俺が車の窃盗や何やらの犯罪行為に加担して来たのがバレてパクられちまうので駈け込めないのだ。

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