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 マドック達の突入部隊が上へと向かって進んで行くその一方で、張り込みを続けていたニコラスはとんでもない事になっていた。

 マドック達が向かって来ている方向とは反対側……つまり下の方に向かって下りる形になっているのである。

 勿論、これはニコラスが下りようと思って下りている訳では無い。

 その証拠に上の方から銃声が聞こえ、彼のすぐ近くに銃弾が撃ち込まれている状況が言葉での理由代わりになっている。

 そもそも何故こんな事態になっているのかと言えば、ニコラスが取り引きの撮影に夢中になっている余り、彼が取り引きの集団を尾行してから遅れてやって来た方から近づいて来る1人の男に気が付かなかったからである。


「……おいお前、そこで何してやがるっ!」

「!?」

 その声がした方向に反射的に振り向いてみれば、そこには盗撮中のニコラスに気が付いた武装集団の1人が居た。

 その男がニコラスに向かってマシンガンを構えようとするのが見えたが、それよりも先にニコラスの愛用のハンドガンであるグロック17から銃弾が撃ち出される方が速かった。

「ぐうぁ!!」

 ドギュドギュドギュドギューン、と銃声が響くと同時にマシンガンを構えた男が崩れ落ちる。

 しかしその銃声で、ニコラスがここに潜伏している事が明らかとなってしまった。

「な、何だぁ!?」

「くそっ、敵か!」

「とっ捕まえろ!!」


 ニコラスは取り引き連中の声がするよりも前に駆け出していた。

 少し遠目気味ではあるものの、取り引きの様子は存分に撮影する事が出来たので後はこれを然るべき部署に出して捜査の手掛かりとして貰うだけである。

 上からは怒声、それに慌ただしい足音と銃声が響いて来る。

 タワービルのエレベーターは当たり前だが動いていないので、今まで上がって来た階段を今度は下るルートになる。

「はぁ、はぁっ!!」

 上に行くより下に下りる方が重力に引っ張られる形になるので幾ばくか楽なのだが、それでも結構高い所まで上がって来てしまったのでなかなかハードだ。

 それでも刑事として常日頃からのトレーニングは欠かしていない上、ギルドのリーダーとしてはここであんな連中に捕まる訳には行かない。


 なのでニコラスは次第に息を切らしつつも、タワービルの階段を下に下にと下りて行く。

(くそっ、マドック達はまだか!?)

 下に下り切ってもそこで捕まってしまえばジ・エンド。

 連絡が無い以上、とにかく今はここから逃げるしか無い。

 階段を飛び下り、通路を駆け抜け、更に散乱している建設資材やドラム缶等を倒して少しでも後ろの連中の妨害になればと思いながらニコラスは突っ走る。

「すばしっこい奴だ!!」

「逃がすなーっ!!」

 後ろからのそんな怒声ももはや耳に入らず、ニコラスは走って走って走って……。

「ぶへっ!?」

 盛大に転んでしまった。

 薄暗い事が災いし、行く手の通路に積まれていた石のブロックに気が付かずにオーバーアクションとも言える動きでつまずいたのだった。


(終わった……)

 転んだ場所の痛みを抑えながらもニコラスは立ち上がるが、足音はすぐ近くまで迫って来ている。

 それでも立ち上がって逃げなければとすぐに思い返すものの、これではこの前の自動車窃盗グループ摘発の時の倉庫の前での出来事と一緒では無いか、とも思ってしまった。

 あの時はマドックとレイジと一緒に、後ろからやって来ていた窃盗団のリーダーに気が付けずに捕らえられてしまった。

 今回はシチュエーションこそ違えど、「別の方向からやって来た敵の存在に気が付かずに、結果的に修羅場を迎えてしまった」事に変わりは無い。

 しかも今回はマドックもレイジも居ない、ニコラス1人の状況。

 つまりニコラスは自分だけで何とかするしか無かったのだが、ここに来てこうして転んでしまったので一気に距離のアドバンテージを縮められてしまった。


 だけどまだ可能性はゼロじゃない。捕まっていないならさっさと立ち上がって再び逃走しなければ。

 そう思って再び足を動かし始めたニコラスだったが、その足が引っ張る身体が前方の「何か」にぶつかってしまった。

「……おい、慌てるなよ」

「っ!?」

 聞き覚えのある声。

 その声にニコラスが目を見開きながら、「何か」を見上げてみる。

 いや、この場合は「何か」では無く「誰か」と言った方が良いだろう。

 それもその筈、その「誰か」とは下からこのビルに向かって突入作戦を決行して、ここまで辿り着いていた警官隊のリーダーである、ギルドの装備に身を包んだマドック・フロックハートだったからだ。


「ま、マドック!?」

「すまない、突入の連絡を忘れていた。後ろの奴等は俺達に任せておけ」

「助かったぜ!!」

 連絡ミスは勘弁してくれと思いつつも、この場に来て相棒がタイミング良く到着してくれた事にニコラスは安堵しながら更に下へと下りて行く。

 後ろの方では銃撃戦が始まった様であり、銃声が響いているものの今は自分が安全に脱出するのが先だと言う事でニコラスは相棒とその部下達に修羅場の処理を任せる事にした。

 だが下まで下り切って安堵したニコラスが冷静さを取り戻して行くと同時に、とある疑問も同時に覚え出す。

(……ルイーゼはどうなった?)

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