3. 偶然
今回と次回はよくあるテンプレです
時間が無かったので、結局図書館には行けなかった。ついでにこんな物騒な物持って行く訳にもいかないだろうし…
部屋に戻ると、先生は既に部屋にいた。
目が合い、先生が微笑んだ。
「おかえりー」
「た、ただいま…」
「その刀はどうしたの?もしかしてお父さんに会った?」
「知ってたんですか?」
「そりゃもちろん!有名よ!」
「そ、そうなんですか…」
まじかよ親父…
「で、早速だけど学園の見学に行きましょう!百聞は一見に如かずです!」
「あ、はい!」
時計を見た。まだ朝の9時だ。
ー ー ー
正門のすぐ奥には6階建の立派な校舎がそびえ立っていた。周囲には幾つかドーム型の建物も見える。
「まずは練習試合でも見ます?」
「試合?」
「高校生の魔導士ってのは魔導士の本来の職務よりも競技のような面が大きくてーー 説明し辛いけど、剣道とかが派手になった具合ね」
「はあ…まあ取り敢えず見ておきます」
そして、先生と共にさっき見えたドームの一つに入った。中では二人の選手が丁度試合を始めようとしていた。右側の選手は剣を持っていて、左側の選手は何も手にしていない。
天井には巨大な電光掲示板が取り付けられていて、二人の名前と顔写真、2桁の数字が7個ずつ表示されていた。右側が藤岡、左側が小原という選手のようだ。
「あの数字は?」
「後で教えます」
きっとステータス的な何かだろう。
試合はすぐに始まった。
まず小原選手が右手を前に出し、光る弾のような物を3発放った。すかさず藤岡選手が最初の2発を左に転がって避けた後、最後の1発を剣で受け止めた。
藤岡選手は急激に加速し、間合いを詰め、剣を振るう。小原選手は大きく反ってギリギリで躱した。
一旦藤岡選手から離れた小原選手は大量の魔法弾を続け様に放ち、藤岡選手がそれを必死に避ける。まるで弾幕ゲーム。東方プ○ジェクトでいうルナティック並みの密度だ。(知らない人ごめんなさい)
30秒程で藤岡選手の足に1発当たり、動けなくなった藤岡選手は降参した。
呆然としていた。
開いた口が塞がらないとは、この事を言うのだろうか。一種の恐怖さえも感じた。それと同時に心の何処かで「楽しそう」と思う気持ちも芽生えていた。相反する2つの自分にまた恐怖を感じた。
ー ー ー
必要な手続きの為に職員室に向かう事になった。
昨晩に雨が降ったらしく、コンクリートの地面はひどく濡れていた。
階段を登ろうとした時だった。
きゃっ!という高い叫び声が聞こえ、前を見上げると、ロングヘアの女の子が階段から滑り落ちてきた。俺は咄嗟に彼女をお姫様抱っこで受け止めた。俺の右手は柔らかい膨らみに触れていた。偶然。偶然だよ偶然。
「あ、ありがとう…」
「いえいえ。怪我は無いですか?」
「ええ」
まもなく彼女は俺の右手の位置に気付き、顔を真っ赤に染めた。
西洋風の顔立ちの彼女の表情は羞恥から怒りに変わった。
俺の手を振り解き、立ち上がった。
「助けて頂いた事は感謝するが、この手は一体どういう事だ?」
「あ、いや、それは、その…事故です!」
「では何故手の力加減を絶え間なく変えていた?」
「き、気のせいですよ!」
思い出してニヤけてしまった。が、彼女の憤怒の表情を見て戦慄する。
「この私の胸を触るとはいい度胸だ…私が直々に処刑してやろう」
「えっ、いや、待って、まだ死にたく無いんですけど…」
彼女が両手を広げると、強烈な光とともに鮮やかな装飾の大剣が現れ、彼女はそれを両手で構えた。
目が明らかに殺気立っている。
俺は再びの死を覚悟した。
「そこまでです、ノエルさん」
先生の間抜けた声が聞こえた。ノエルとはこの子の事だろうか。
「織部先生か…何の用だ?」
「試合で処刑した方が面白くない?」
どっちも面白くないって!
「そうだな…そうしよう。では第二闘技場で11時に決闘だ」
「ちょっと待って!俺まだ魔法使えないんだけど…」
「嫌ならこの場で処k」
「やりますやります11時に第二闘技場ですねわかりました」
「楽しみにしてるぞ」
ふんと鼻を鳴らし、彼女は去っていった。