2. 再会
『剣神』
俺の親父は余りの強さからそう呼ばれていた。
親父は室町時代から続く東雲一刀流の道場『蓮水館』の29代目で、10歳の頃には大半の門下生が相手にならなくなる程まで上達した天才だったらしい。
そして俺はそんな親父の長男 ──いや、道場の後継ぎとして産まれた。
ー ー ー
俺からするとつい昨日も会った人だが、親父からすると50年ぶりの再会だ。しかも、死んだはずの息子が、当時の格好のままで。
少し近づくと、親父も俺に気付いた。
満面の笑みを湛えていた。
感動の涙や驚きの表情は一切無かった。
親父は子供のように喜んでいた。
ー ー ー
「やはりお前じゃったか!予想はしておったがな!」
親父はそう言うと高らかに笑った。
「どうしたその顔は!もっと親父との再会を喜べ!」
そして一層高らかに笑った。
俺は混乱している。
特に親父が驚かない事に驚いている。
そんな俺をよそに、親父は一人で盛り上がっていた。
一方的に思い出話を20分程聞かされた。ほとんど聞いていなかったが。
ー ー ー
その後、親父はふと思い出したように言った。
「お前に渡しておきたい物がある。儂が持っていても手持ち無沙汰だろう」
親父は両手を前に出し、目を閉じた。すると手の周囲の空間が歪み始め、黒い穴が生まれた。親父はその中に手を突っ込み、刀を2本取り出した。
1つは見た事があった。
東雲家に代々伝わる家宝、名刀『杜若』だ。時々親父が振っていたが、普段は道場の隅に丁寧に保管されていた。
もう一本は初めて見る刀だった。不気味で禍々しいオーラを放っており、近寄り難い雰囲気を感じた。
「これは…?」
「室町時代に7本作られたとされる呪刀の1つ、『氷醒』じゃ。呪刀は使用者の思考の一部を乗っ取って、その力に変える非常に強力な刀じゃ」
「それをーー」
「お前以外に渡せる奴がおらんからのう…ただーー その刀は非常に危険じゃ。凡人が使えば自我を失う。お前は凡人ではないからその点は大丈夫だが、ピンチの時以外は使わない方が身のためだぞ」
「そんな強力なものを俺が…」
「お前はいずれトップクラスの魔導士と戦う事にもなるだろう。その時に多少の役に立つかもしれんぞ?」
そして親父は再び高らかに笑った。
親父は2刀を俺に渡すと「期待してるぞ」と言って去った。
その背中にかつての面影は無かった。
ー ー ー
「この時期に連れてくるとは一体何の真似だ?」
「管理者が直々に」
「ほう、それは面白そうだ。期待してるぞ」
3月7日追記 刀の名前を声に出して読むとダサかったので変更しました