そのはちじゅうななです。
私はどうしたものかとぼんやりと部室を眺めていると、部室のドアの前でリリサちゃんが手招いている事にふと気がつきました。
なんでしょうか?
そう疑問を感じましたが、やる事もなかったのでリリサちゃんの所へ向かいました。
「どうしたんですかリリサちゃん?」
「……これ、鍵を開けて、おいた」
リリサちゃんはそう言って部室の鍵穴を指差しました。
「いいんですか? 私を逃がしても?」
「……うん。寧ろ、迷惑をかけたのは、蒼波達の方だから……後はわたしが、なんとか言っておく」
「……リリサちゃんは小さいのにしっかりしているんですね」
「……? そんなこと、ない。少し前だって、化学部の皆に、由々にたくさん迷惑かけた」
「そうなんですか?」
「……うん。本当に、たくさん……」
少しだけ顔を伏せるリリサちゃん。
その表情は年相応の少女が見せるものでした。
「何があったかは私には分からないですが……リリサちゃんくらいの年の子が人に迷惑をかける事は至って普通の事だと私は思いますよ」
「え……?」
「リリサちゃんは化学部の人達が好きでここにいるんですよね?」
「うん……大好き」
「なら、大丈夫ですよ。きっと、化学部の人達もリリサちゃんの事、大好きなはずですから。迷惑をかけたところで……何も問題はないはずですよ」
「ほ、本当? 嘘じゃない?」
「ええ、本当です。だから、リリサちゃん」
私はそっとリリサちゃんの手を握りました。
「不安にならずに……たまには子供らしく好きな事をやってくださいね?」
「……分かった。やってみる」
最後に私はリリサちゃんに小さく手を振ると、そのまま部室から外に出ました。
『またきてね』とリリサちゃんがそう言ったような声が後ろから聞こえた気がしました。
部室を出てすぐ私はあっ、と声をあげました。
「……蓮さんのこと、忘れていました」




