そのはちじゅうごです。
化学部の部室は既に混沌と化していました。
「さぁ、お二方! ブリッジの体勢により、更に強調された自分の最終形態を目に、瞼に焼き付けるのです! さぁ! さぁ!」
と棡原君が褌姿で叫べば、
「止めろ! 誰かアイツを止め……いや、殺せ! この機会に駆除するんだ! 遠慮はいらん!」
と上神先輩が棡原君を止めるように周りを先導し、
「いい加減しろ棡原! お前の変態行為の所為でどれだけ女子のトラウマを作り上げたと思ってるんだ!」
と青海君が棡原君に向かって蹴りを放っています。
そこに加わる事が出来ない、というよりもしたくなかった私と蓮さんの三人で当然の如く、蚊帳の外で窓から外の風景を眺めていました。
ああ……あれはソフト部でしょうか。部活、頑張ってますね……。
……あれ? 三人……?
そこで私はようやくすぐ側に知らない誰かがちまんと立っている事に気がつきました。
「あなたは、さっきの……」
それは初めに化学部のドアを開けた時に見た、小さな女の子でした。
女の子は大きな瞳を私に向けて、じーっと見つめています。
「何よ、ふわ。その子は誰?」
「私も知りません。……えっと、あなたも化学部の部員なんでしょうか?」
私の問いに女の子は小さく首を振りました。
「……ちがう。わたしは、リリサ」
「は、はぁ……リリサちゃんですか」
「そう……可愛い?」
「え……ええ、何かは分かりませんが可愛いと思いますよ」
「うん、ありがと。……あなたも、中々可愛い」
リリサちゃんはそれだけ言うと、ポンポンと私の体を叩いてきました。
……どうやら、リリサちゃんは結構な天然さんみたいです。
話によると、リリサちゃんはここの部員ではないそうですが……誰かの妹とかそういうのだったりするんでしょうか?
ちょっと、聞いてみましょうか。
「あのっ、リリサちゃんはあの中の誰かがお兄さんだったり、お姉さんだったりするんでしょうか?」
あの中というのは勿論、化学部の人達です。
「ちがう」
「え、ちがうんですか?」
「……けど」
リリサちゃんはそこで一呼吸を置いてから、衝撃の言葉を言い放ちました。
「わたしは……蒼波の……嫁」
「ええええっ!?」




