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そのはちじゅうよんです。

 化学部を見学しに来た私達は最大のピンチに陥っていました。


「さぁ、後輩達。その入部届に名前を記入してもらおうか。というより、もらうまで返さないゾ♡」

 私達をそんなに化学部に入部させたいのか、上神先輩が台詞に意味深なハートまで付けて脅してきました。

 それは怖いなんて言葉では言い表す事は出来なく、私達は互いに体を寄せ合い、身を震わせる事しか出来ませんでした。

 が、その時、青海君が頭を押さえながら、呆れた表情を浮かべました。

「部長……こんな事して大人気ないとは思わないんですか?」

「何だ青海後輩? 後輩が欲しいとは思わないのか?」

「いや、思わなくはないですけど……でも、方法ってものが」

「部員が増えれば、棡原後輩の面倒を見なくて済むかもしれんぞ?」

「そうですね部長! 僕達にはなり振り構っている余裕がないんでしたね! 是非、二人には部に入部してもらいましょう!」

「青海君に裏切られました!?」

 何という事でしょう。唯一の味方と思われる方が寝返ってしまいました。

 というより、そんなに棡原君の面倒を見るのが嫌なんでしょうか……? 未だ縄で縛られ、床に転がっている棡原君が少しだけ哀れに思います。

「さぁ、青海後輩も私に同意をしてくれた事だ。二人も納得はいかないだろうが、入部届に名前を記入してはくれないか?」

「その、理不尽過ぎると思うんですが……」

「細かい事は気にするな後輩よ」

「全然細かくないですよ!? 何かいいように諭そうとしてません!?

「違うな。私は後輩達に強要をしているだけだ」

「寧ろ、酷くなってるじゃないですかぁっ!」

 押しが強すぎる上神先輩に、もう駄目かと涙を浮かべたその時でした。

 床から突然、のそりと立ち上がる人物。

 その人物は縄で縛られていたはずでしたが、自力で解いたのか縄がするりと床に落っこちました。

 そして、人物は眼鏡を持ち上げるとその場にいる人達に自己紹介をするかのように名乗り出ました。



「棡原 孝一こういち。普通の高校生を改め──ただの変態です」


 すいません。折角出てきてもらってなんですが、事態をややこしくしないでくれませんか?

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