そのはちじゅうにです。
「取りあえず、アレと止めるから待っててね……」
そう言って部室に入っていった青海君は何やら疲れた表情をしていました。
……苦労してるんですかね。
親近感を覚えてしまうのは何故でしょう。
その時、横にいる蓮さんが肘で突いてきました。
「ねぇ、ふわ」
「何ですか、蓮さん?」
「……帰りたいと思うのは、アタシだけ?」
「……いえ、私も思ってますよ」
しかし、ここまで来てしまった以上はもう引き返せませんよね。
諦めて覚悟を決めるしかありません。
しばらくして、「入っていいよ」と青海君の声がしたので、私は生唾を飲み込むと蓮さんと顔を見合わせました。
今日でドアを開けるのは既に三度目……その全てが何かしらの異常があったのですから、今回も……。
警戒しながら、私はゆっくりとドアを開けました。
「ごめんね。少しお茶の準備に手間取っちゃったよ」
頭をかきながら淹れたてと思われるお茶をテーブルに置く青海君。
その光景自体は普通で、特に問題はありませんでした。
しかし……
「んーっ! んーーっ!!」
そのすぐ側で縄でグルグル巻きにされた上、口にガムテープを貼られた棡原君が必死にもがいているのが問題なわけでして。
どうしてこうなったのかと、私と蓮さんは揃って引きました。
青ざめる私達に青海君が笑いかけてきました。
「ああ、棡原ならこうして縛ったから安心して。これでもう変な事はしないだろうから。というか出来ないだろうから」
「あ、あはは……」
乾いた笑いしか出ないんですが。
何でしょう、ここは。私の化学部の在り方という概念を見事に壊していきましたよ? そもそも、ここは本当に私がいつも通う高校なんでしょうか?
「……アタシ今まで、アンタの事を普通の奴だと思ってたけど……」
「え? いきなりどうしたの津出川さん?」
「訂正するわ。アンタはあのクラスの中で誰よりも普通から掛け離れているわ」
「何を言うかと思えば、酷くない!?」




