番外編 そのきゅう。
──決めるのはおぬしじゃ。動くか動かないか決めるのもおぬしなのじゃぞ?
不意に俺は萬の言葉を思い出す。
あの言葉を聞いても、俺は動く事は出来なかった。
怖かったから。
傷付けたくなかったから。
だが俺は今、綿々の言葉を受けて、自分でも信じられない事に、動こうとしていた。
動く? どうして?
そもそも俺はどうしたいんだ?
いや、そんな事、既に分かりきっている。
俺の思いはそれだけで、それはとても単純な事なのだから。
閉ざされた扉を前に、俺はドアノブに手をかけた。
ゆっくりとドアノブを捻る。
開かれるドアから光が差し込む。
ドアを開けたすぐ先には、手を伸ばす形で立っている綿々がそこにいた。
──俺も、綿々と一緒にいたい。
その思いで、俺は改めて綿々に問いた。
「俺は……お前を友人と呼んでいいのか?」
「何を言ってるんですか、夜切君は?」
やれやれとばかりに綿々が首を横にふった。
そうして、満面の笑みを浮かべて、言ったのだった。
「もう、私達はとっくに友達じゃないですか」
その笑顔に、俺は救われた気がした。
いつの間にか、頬に何かがつたっていた。
手を使って拭うと、それが涙だとようやく分かった。
この涙の理由は嬉しかったからなのか、一緒にいていいと分かって安心したからなのだろうか。
どっちかは分からない……もしかしたら、どっちもなのかもしれない。
「……ああ、そうだったな」
ただ気がつくと、俺は伸ばされた手の平を握っているのだった。




