そのななじゅうろくです。
結局、夜切君は怖かったんでしょうね。
一人になるのが、また孤独になる事が。
だけど、それ以上に自分が許せなくて、許せなくて……。
『お願いだ……綿々。俺から、離れてくれ……!』
嗚咽が混じった夜切君の声。
夜切君が苦しんでいる事は、本当は言いたくもない事を言っているのは、誰が聞いても明白でした。
そんな夜切君に私が出来る事といえば……。
私は少し考えてから、ドアの向こうにいる夜切君に向かって言いました。
「嫌です」
まずは、我儘な子供のようにはっきりと。
「どうして、私が夜切君と離れなくちゃならないんですか? 意味がよく分かりませんよ?」
次に、本当に不思議そうに。
「私は夜切君と一緒にいて、とても楽しかったですよ。夜切君も私といて、楽しかったんでしょう?
なら、それでいいじゃないですか」
それはとても単純な理屈で、自分がどんな事を考えていた事や、自分がどういう人間だから、なんて事が一気に馬鹿らしくなるような発言でした。
「夜切君と話せないとつまらないんですよ。夜切君が隣にいないと落ち着かないんですよ。夜切君とふざけ合えないと面白くないんですよ」
ですが元々、人が一緒にいたいっていうのはそういう事ではないんでしょうか。
相手がどう思おうが、自分が一緒にいたいとそう思っているから、一緒にいるんじゃないですか。
なんて、言うのは我儘じゃないですよね?
「私はただ、夜切君と一緒にいたいんですよ。夜切君が自分をどう思おうかは関係ありません。
……だから、一緒にいて下さい」
これがもし、私の我儘だったとしても、私は同じように言ったでしょう。
理由は言うまでもありません。
私は軽く、目の前のドアのノックしました。
途端に静かになる空間。
少しして、ドアから恐る恐ると言った感じで夜切君の声がしました。
『どうして……そんな事が言えるんだ?』
「そんな事、決まってるじゃないですか」
最後は、当たり前のように、言います。
「──私が夜切君と一緒にいたいと思う、夜切君の友人だからですよ」
あと少しで、二章閉幕です。




