そのななじゅうごです。
『初めてだったんだ……! 初めて、家族以外に俺と話してくれる奴が、ふざけ合ったり、テストで勝負したり、一緒に出かける事の出来る奴が俺に出来たんだ……!』
夜切君が絞り出す、叫び。
これはきっと、夜切君の本心なんでしょう。
不思議と私はそう思えました。
私は何も言わず、黙ってその声に耳を傾けました。
『そんな奴を、お前を俺は傷つけたっ! 俺は足場が崩れていきような恐怖に陥った! 謝ればいいのか、何をすればいいのか分からなかったんだ!
恨まれたら……口も聞けなくなったら……お前に嫌われたらどうしようかと、俺はそんな事ばかり考えていた! どうしようもなく、堪らなく不安だったッ!
違うんだ……! 違うんだよッ!』
夜切君の叫びを聞いて、私はそこで考えたら当たり前の事に、ようやく気がつきました。
『本当は違うんだ! 俺はお前に怪我を負わせた事に全く責任を感じていなかったッ!
俺は……お前に拒絶されたらどうしようと、それだけを考えてたクズ野郎なんだよッ!!』
──夜切君も寂しいと、そう思う事があるのだと。
前に夜切君は一人でいるのは慣れたと言っていましたが、子供の頃からその状態を続けるなんて事、普通の人間じゃありえません。
あれは強がり、だったんでしょう。
『俺は優しい人間なんかじゃない! 綿々が思っているような、そんな人間じゃない! 最低なんだよッ! 他人じゃなく、自分の事を先に考えるような……そんな汚い人間なんだよッ!
そんな汚い人間が……お前に近づいていいわけないだろうがッ!!』
俺は自分がどうしようもなく嫌いだ、と夜切君は吐き捨てるように続けて言いました。
『分かったなら帰ってくれッ! 俺みたいな嫌な人間の傍から離れていってくれッ! でないと、俺はもう……! もう……!』
『自分を殺したくなる……ッ!』




