そのななじゅうです。
確かに私が夜切君に出来る事なんて、ほとんど何もないかもしれません。
ですが、ない訳じゃありません。
なら、私は夜切君のために出来る事はやっておきたいんですよ。
だから、私はお兄ちゃんに向かって、そこをどいてくれるように願いを口にしました。
「お兄ちゃん……本当に駄目なんですか?」
「……」
お兄ちゃんはもう、何も言ってはくれませんでした。
ただ、無言で手を広げていました。
「私は……夜切君に早く会わなきゃならないんです。それが、駄目なんですか? お兄ちゃんはどうしてもここを通してくれないんですか?」
「……」
「私、お兄ちゃんの事、嫌いになりますよ?」
「……」
「口も聞きませんよ?」
「……」
「それでも……通してくれないんですか、お兄ちゃん……っ!」
「……」
俯いたまま顔を上げないお兄ちゃん。
が、動けないでいる私にお兄ちゃんはぽつりと呟きました。
「……こんな事になる事くらいは分かっていたんだけどな」
「……お兄ちゃん?」
お兄ちゃんは広げた手を元に戻すと、入り口を指差しました。
「行きなよ」
「え……?」
「行きなよ、ふわ」
お兄ちゃんの意図が分からず、ぽかんとしてしまう私。
お兄ちゃんはそれ以上、何も言うつもりはないのか私を見る事無く、どこかへ行きました。
後ろ向きに手を振るお兄ちゃんを見送るようにその後を目だけで追いました。
よくは見えませんでした。
もしかすると、私の勘違いかもしれません。
けれど、ほんの少しだけ、それを私はそれを見たような気がしました。
「お兄ちゃん……泣いていました?」




