そのろくじゅうはちです。
「……夜切君にとって、私は特別だった?」
「周りにいる誰かが傷つくくらいならって、孤独になっていた夜切君にふわちゃんは自分から歩んでいった。友達になろうとした。仲良くしようとした。
……分かるー? そんな人、ふわちゃんだけだってー」
「わたしは……そんなに大層な事はしていません」
「そうかもしれないねー……だけどね、ふわちゃんー」
口調はいつも通りおっとりしているものの、真剣な眼差しで私を見つめる夏美さん。
夏美さんは一拍を置くと、口を開きました。
「……もう一度言うけど、夜切君にとって、ふわちゃんは特別な存在なんだよー。
その上で聞きたいんだけどー……どうして、ふわちゃんは夜切君を助けたのー?」
「それは……」
「理由はなかったー? ただ助けたいと思ったからー? 違うよねー、ふわちゃんー?」
「……ええ、そうです」
答えるのは簡単で、伝えるのは難しい。
「どうしてー? ふわちゃんはどうして夜切君を助けたのー?」
ですが、伝えなければ分からない、不器用で、変態だけど、誰よりも優しい、確かにそんな人がいます。
「そんなの……決まっているじゃないですか」
だからこそ、私はそれをその人に伝えなければなりません。
何故なら、私は──
私が……夜切君の事がどうしようもなく好きだからですよ……っ!
「……自分の気持ち、ようやく分かったー?」
夏美さんが、私に微笑む。
私も夏美さんに微笑み返しました。
そうして私はその場で踵を返しました。
「私、ちょっと行ってきますっ」
「うんー、行っておいでー」
病室を飛び出し、私は病院の廊下を駆け出します。
──ありがとうございます。
そう、心の中で夏美さんに礼を言って。




