そのろくじゅうななです。
「夜切君はきっと、責任を感じているんだよー」
「責任……」
「うんー。ふわちゃんもその事には薄々気づいてたんじゃないのー?」
「……夜切君は私が怪我したのは自分のせいだと、そう思っているという事ですか?」
「そういう事だと思うよー」
「何を言ってるんですかっ。私が怪我をしたのは自業自得です。夜切君が責任を感じる必要なんて何一つ……」
言葉の途中、夏美さんが手で制してきました。
「ふわちゃんにとってはそうかもしれないよー。だけど、夜切君の考えは違うんだよー」
「そんな……」
……でも、確かに夜切君はそういう人でした。
自分よりも他人が大事で、他人を助けるためなら悩む事なく自分を傷つける、自己犠牲の精神。
今回だって、一歩間違えれば夜切君が轢かれていました。
そんな時、夏美さんがぽつりと呟きました。
「夜切君はさ、怖いんだよー」
「? 怖い?」
「うんー。夜切君は多分だけど、自分のそばにいる人達が傷つくのを怖がってるんだよー」
「どうして、そんな事が言えるんですか?」
「だって、わたしが知る限り、今まで夜切君のそばには誰もいなかったからー」
「──っ」
「自分と関わったら、不幸になるって夜切君はそう思ってるんじゃないかなー? もしかしたら、クラスの皆が夜切君に近づかないんじゃなくて、夜切君がクラスの皆に近づかないようにしてるんじゃないのかなー?」
「どうして……」
「そんなの決まってるよー。夜切君と関われば、周りから目が変わる。それが、夜切君には堪えられないんだろうねー」
でもー、と夏美さんは一呼吸置いてから言いました。
「ふわちゃんは違った。ふわちゃんは、夜切君が変人だと分かっても、セクハラしても、関わるのを止めなかった。夜切君にとって……ふわちゃんは特別だったんだよー」




