……そのろくじゅうさんだ。
俺は病院の屋上にいた。
ここに来たのには特に理由はなかった。
ただ、少し風に当たりたい気分だったのだろう。
「……」
俺はずっと疑問に思っていた。
あいつは……綿々は、どうしてあの時俺を庇ったのだろう?
俺はそれだけがどうしても分からなかった。
人が轢かれるのを見過ごせなかったからか?
いや、冷静な綿々の事だ。自身の身に危険を及ぼすような、そんな事はやらないだろう。
なら、どうして?
どうして俺何かを?
ふわがあの時に何を思ったのか、俺には分からなかったし、行動に理解も出来なかった。
だが、俺は綿々が怪我を負ったと分かった時、胸の奥がズキリと痛んだ。
別に胸に怪我を負ったわけではなかった。地面に胸を打ち付けたりなんてしてなかった。
それでも、胸が痛かった。
……初めてだった。
他人とあんなに楽しく過ごせたのは。
楽しい、とそう思ったのだ。
なのに、俺はそれを壊した。
壊してしまった。
きっと、綿々も怪我が治ったら俺の事を恨むのだろう。
クラスメートと同じようになって、俺の事を避け、嫌うのだろう。
俺はそれを受け入れなければならない。
だが、仮にだ。
仮に綿々が俺がいつもような態度で接してきたら……俺はどうする?
俺のせいで綿々は怪我を負ったのだ。会わせる顔なんてあるわけがない。
綿々といつもを過ごすなんて事、俺にそんな資格はもうない。
そうして、俺はある決心をした。
「……俺は、もう綿々には近づかない」




