番外編 そのろく。
「──全治三週間、と言った所でしょうね」
カルテらしき物を持った医者が静かにそう告げた。
「出血は激しかったですが、命に別状はないでしょう。足の方も骨にヒビが入るだけで済んでますので、リハビリの必要はないと思います」
「そうですか……」
ふわが助かったという安堵と同時に、僕は激しい憤りを感じた。
拳を力強く握り、湧き上がる怒りを噛み殺す。
そうして、僕は未だに目が覚めないふわを見やる。
ヒビが入った左足、それと特に傷が酷い腹部にグルグルと包帯がまかれ、体中の至る所にガーゼが当てられていた。
見るも痛々しい姿だった。
僕は医者に尋ねた。
「……傷跡は残るんですか?」
僕の問いかけに、途端に医者は顔をしかめた。
「……小さな傷、顔などの方なら問題はありません。しかし、損傷が激しい腹部の傷は……」
医者は一度、押し黙ってから言った。
「……出来るだけ傷跡が残らないよう、努力はしてみます。……では、失礼」
「はい……ありがとうございました」
病室を去る医者に力無く返事をした後、僕は椅子に座ったまま、しばらくふわを見つめていた。
どうして……どうしてこうなってしまったんだろう。
つい朝まではあんなにも元気だったのに。
それがどうして、こんな……!
どうして僕はあの時、ふわを呼び止められなかったのだろうか。
僕が呼び止めていたら、ふわが本当は何をしに行くが分かっていれば……こんな事にはならなかったのに。
考えれば、考える程、僕は激しい後悔に見舞われた。
その時だった。
病室のドアからノック音。
それに気づいた僕はゆっくりと立ち上がると、ドアの方に向かった。
きっと、母さん達だろう。
そう思って、僕はドアを開けた。
が、僕の予想は外れる事になった。
「君は……!」
「……」
ドアを開けた先、そこに立っていたのは初めてあった時とはまるで別人のような死んだような表情を浮かべる──ふわのクラスメートだった。




