そのさんじゅうろくです。
「……まだ残っていたのか?」
「あ、夜切君」
教室で夏実さんと勉強していると、夜切君が現れました。
「見た所……勉強をしているようだが、テスト対策か?」
「ええ。夏実さんがこのままだと留年になりかねませんので」
「……そんなに酷いのか」
「100点満点の小テストで5点しか取れないくらいの酷さです」
「随分具体的な例え……いや、実話かそれ?」
夜切君が目線を向けると夏実さんはさっと顔を背けました。
「しょ、小テストなんかじゃ、人間性は決まらないもんー」
「人間性どうこうの前に高校生として危機的状況にある事を自覚した方がいいと思うんだが……」
珍しく夜切君が正論を言いました。
って、そういえば……。
「あの、夜切君は随分余裕そうですが、テスト勉強はしてるんですか?」
「テストに関わらず勉強は毎日やらされ……している」
「へぇ、流石勉強熱心ですね。私も日曜日以外はきちんとやるようにしているんですが……」
「……やらないとアイツに殺されかねないからな」
「?」
夜切君が何かボソッと呟いたようですが、よく聞こえませんでした。
「夏実さんは勉強していたんですか?」
「聞く必要あると思うー?」
「……どうして自慢気なんですか」
どうやらしていなかったようです。
勉強しなかったらそれはこうなりますよ。
「だって、数字って見てると眠たくなるし、英単語は眠気を誘ってくるし、化学式はうとうとしちゃうしー……」
「どうして全て睡眠に繋がるんですか……?」
「新手の催眠術か」
夏実さん曰く、『文字や記号は睡眠薬』だそうです。




