そのさんじゅうさんです。
「あれ……夜切君?」
三年生の教室に向かって廊下を歩いていると、前方に夜切君の後ろ姿が見えました。
夜切君も私に気がついたようで、その場で立ち止まりました。
「綿々か……」
「こんな所で奇遇ですね、何をしているんです?」
「ちょっと図書館に用事あってな。今はその帰りだ。お前は?」
「お兄ちゃんに忘れ物のお弁当を届けに来たんです」
私が手に持つのは風呂敷に包まれているお弁当箱。
朝、委員会の仕事があると言って慌てて出て行ったからか、私が折角作ってあげた弁当を置いて行ってしまうのだから、お兄ちゃんには困ったものです。
「ああ、もうすぐ昼休みだからな」
「ええ。お兄ちゃんが購買でパンでも買う前に渡さないと……あ、ついて来てくれるんですか?」
「……別にやる事はないしな」(ムニュムニュ)
「それなら言いながらお尻を揉まないで欲しいのですが……」
「気が付いたら手が伸びていた」
そんな風に二人で会話をしながら歩いていると、目的地であるお兄ちゃんの教室に着きました。
二、三度ノックをして教室の扉をスライドさせると、お兄ちゃんは教室の奥にいました。
「……どうやらお話中のようですね」
「話? 誰とだ?」
ひょいと夜切君が横から教室を覗き込みました。
お兄ちゃんの正面に立つのは米山先生──つまりは風紀委員の先生でした。
二人は何やら真剣な様子で話しあっているようです。
「……つまり、ここの点は早急に直すべきという事かな?」
「ええ、そうですね。その方法だと生徒に指示を得られないと思いますし、何より手がかかります」
「ふむ……この事については後で検討してみよう。他にはあるかね?」
「はい。この件なんですが……」
その会話を聞いての夜切君の一言。
「……誰だアレ?」
「お兄ちゃん、学校では優等生で通していて……先生達からの信用も厚いみたいなんです」
完全に別人だと、夜切君は後ほど語りました。




