そのにじゅうきゅうです。
「ところで、アンタはここで何をやってるの?」
「ちょっと、落とし物をしてしまいまして……今、それを探しているんですよ」
「落とし物?」
「ええ。大事な物なので、早く見つけないといけないのですが……見ての通り、まだ見つかってないんですよ」
携帯は誰かの手に渡ったら、悪用されてしまうかもしれません。
そうなったら大変な事になってしまいますし……。
「ふーん。それってもしかしてこれの事?」
津出川さんが取り出した物に私は目を見開きました。
だってそれは羊のキーホルダーが付いた私の携帯だったんですから。
「そ、そうですこれですっ。どこにあったんですか?」
「教室の前に落ちていたわ。誰の携帯か分からなかったけど、一応拾って置いたのよ」
私は津出川さんから携帯を受け取ると、見つかって良かったと安堵の息をしました。
「そうだったんですか……あのっ」
「? 何よ?」
私は頭を津出川さんに向かって深々と下げました。
「ありがとうございました。私が不用意に落としてしまった携帯を拾ってくれて、本当に感謝します」
すると、津出川さんは顔を耳まで真っ赤にさせ、急にそっぽを向きました。
「ふ、ふん! べ、別にアンタのために拾ったんじゃないし? 拾ったのはたまたま……そう! たまたまよ! たまたま拾っただけなんだからね!」
わたわたと忙しくリアクションをとる津出川さん。
そんな津出川さんに一人の男子生徒が近づきます。
「おーい、津出川? 大分ウロウロしていたみたいだけど、携帯の持ち主見つかったのかー?」
「ちょっ!? アンタ、何言ってるのよーっ!? それじゃあ、持ち主をずっと探していた事がバレちゃう……はっ!?」
「津出川さん、私のためにそこまで……」
「違うーっ! 違うのよーっ! ワタシはそんなつもりじゃ……なかったのよーーーっ!!」
やがて津出川さんは廊下を全力疾走し、去って行きました。
「……津出川さん、いい人です」




