そのにじゅういちです。
仔犬を見せると、お兄ちゃんはすぐに私達を家の中に入れてくれました。
「もう、犬の介抱の為に来たなら、そうと言ってよ。お陰で夜切君をどう殺すかのパターンを126通り考えちゃったじゃないか」
「その台詞は、決して本人の目の前で言うものではないと思います」
「というより、犬の介抱の為ならセーフなんだな」
お兄ちゃん曰く、下心が少しでもあった場合、アウトだそうです。
私が仔犬に牛乳を与えている間、お兄ちゃんが夜切君に自己紹介をしていました。
「さて、改めて自己紹介をしようか。僕の名前は綿々 絹。ふわの実の兄にして、ふわの婚約者だ」
何ですかその自己紹介は。
嘘を教えないで下さい、嘘を。
「……夜切 夕。特技はセク──女子スカートについての研究だ」
夜切君。セクハラと答えようとして、お兄ちゃんがいるから止めたんでしょうが、それではあまり誤魔化せてません。寧ろ、直接的な表現ではなくなった分、何かいやらしく聞こえます。
「スカートについての研究とは変わった趣味だね。ドレスメーカーでも目指してるのかい?」
そのお兄ちゃんは夜切君の言葉に気が付いていませんでした。
「そういうわけではないんだが……」
「そうなのかい? まぁ、何でもいいよ。兎に角、君が面白い子って事は分かったしね」
あははは、と朗らかに笑うお兄ちゃん。
どうやら先程までの険悪ムードは払拭されたようです。
私はその二人の様子を仔犬を抱き抱えながら横目で見てました。
「それでちょっと、夜切君に聞きたい事があるんだけどいいかな?」
「? 何だ?」
「いや、これは噂なんだけど……」
「僕達が通う学校にセクハラばかり繰り返す変態の中の変態がいるって聞いたんだけど、それって本当?」
「それは身も蓋もないデマだ」
噂の張本人は顔色一つ変えずに答えていました。




