そのにです。
──絶句以外の選択肢はありませんでした。
私は初め、彼が何と言ったのか分かりませんでした。
分かりません。彼は初対面で更に女子である私に初っ端から何を言い出したのでしょう?
私の聞き間違いかもしれません。というより、その可能性が高いです。
そうでなければ、彼が転校生の女子に向かって「賢者タイム」と言い出す頭のおかしい人になってしまいます。
それは彼に失礼です。
リトライ。私はもう一度、彼に尋ねました。
「あの……今、何と?」
「wire person time.」
何故、英語なのでしょう。しかもかなりネイティヴな発音でした。
そんな事より『wire person time.』……えっーと、あっ、わざわざ訳す必要もありませんでしたね。
私の頭と耳がおかしくなったのではないとすると、彼は大真面目な顔をしながら、女子である私に向かって「賢者タイム」と英語で言ったと……。
「…………」
いえ、意味が分からないです。これがもし、彼なりのボケだったとしても、私には重過ぎます。ツッコミを入れたり、ボケで返す、なんて事は高度過ぎて考えられません。頭の中で処理するのも一杯一杯なんです。無理です。とてもここから上手く立ち回る事なんて事は出来そうにありません。
私はまだHR中だと言うのに、すっかり塞ぎこんでしまいました。
ここで言葉を発する事が出来なかった私を一体、誰が責められる事でしょうか。
その時、塞ぎこんでしまっている私を不審に思ったのか、彼が声をかけてきました。
「生理か?」
「いや、もう本当に勘弁して下さい……」