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そのじゅうきゅうです。

 それからしばらくしてアパートの前に着くと、夜切君が急に立ち止まりました。

 また何か仔犬でも見つけたのかと思いましたが、どうやら違うようです。

「? どうしたんですか夜切君?」

「いや、凄い今更何だが……女の子の家にこうも簡単に入っていいのかと思ってな」

 照れくさそうに頬をかく夜切君に私は思わず吹き出してしまいました。

「……どうして笑うんだ?」

「い、いえ、すいません。ちょっと意外でして」

 学校では女の子達にあんなにセクハラをしていたのに、女の子の家に入るのには抵抗があるんですね。

「大丈夫ですよ。お父さんとお母さんは共働きですので、この時間にはいませんし」

「じゃあ、帰ったら一人なのか?」

「いえ。お兄ちゃんがいます」

 夜切君は目を丸めました。

「……兄弟がいたのか?」

「言ってませんでしたっけ?」

 ちなみにお兄ちゃんは私と同じ高校に二年生として転入してきました。

 夏実さんなど、これから会う機会もあるかもしれませんね。

 私としてはあまり会わせたくはありませんが……。

「お前の兄はどんな奴なんだ? やはりお前に容姿は似ているのか?」

「似てるとはあまり言われませんけど……どんな人だと聞かれると少々言いにくいです」

「仲が良くないとかか?」

「仲はいいですよ。ですが、その、良すぎるというか……」

 ああ、どう説明すればいいんでしょうか。

 私の濁したような言葉に夜切君が首を傾げていると、遠くから聞き覚えのある声がしました。

「おーい! ふわー!」

 その声の主を誰だか確認出来た後、私は額に手を当てざる終えませんでした。

 ……タイミングが良すぎるんですよお兄ちゃん。

 家の前で私に向かって手を振るのは、噂をすれば何とやら、私のお兄ちゃんでした。

 お兄ちゃんはそのまま私達の方へと駆け寄ってくるなり、私に飛びつくように抱きついてきました。

「大分遅かったじゃないかふわ。心配したぞー?」

 お兄ちゃんはそのまま私の全身をわしゃわしゃしてきました。

「あの……毎回言っているんですが、人前で私に抱きついてくるのは止めて下さい」

「それは人前じゃなければいくらでもOKというわけかい!?」

「違います」


「……なるほど。こういう奴か」



 私とお兄ちゃんがやり取りをしている中、夜切君が何かを理解したように頷いてました。

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