そのじゅうはちです。
自分の事を話す夜切君の顔はどこか寂しそうでした──なんて。
もし本当にそういう風に夜切君が分かりやすい顔をしてくれていればどんなに良かったでしょう。
どんなに夜切君は救われていた事でしょう。
自分の事を話す夜切君の顔は無表情でした。
自分の事だというのに他人の事話しているようで、夜切君は本当に……何も思っていませんでした。
理不尽に対する怒りとか、家族や友人もいない悲しみとか、そんな感情をどこか捨て去ってしまったようです。
夜切君の言う通り、これは私が気にやむべき問題ではないのかもしれません。
ですが……。
少し遠くまで離れていってしまった夜切君を私は全速力で走って追いかけました。
走って、走って、ようやく夜切君の姿が見えると私はその肩を掴み、引き止めました。
振り向いたその表情は驚きというよりは困惑に近かったです。
「夜切君っ」
「……どうしかしたか?」
「仔犬の介抱をするなら……私の家の方が近いですよ」
「は? いや、いい。そこまで世話にはなれない……」
「いいから来て下さいっ」
「お、おい」
有無を言わさずに私は夜切君の袖を引っ張って、引きずるように来た道を引き返して行きます。
「綿々……話を」
「夜切君は最低です。初対面の人にセクハラ発言をして、クラスメートの皆さんの胸やお尻を触って……胸のサイズまで測って」
「いきなり何を……」
「熟女の方が女性じゃないとまで言いましたし、ロリコンですし、24時間、常に妙な事を考えている変態です」
「さ、流石に寝てる時は自重している」
「ですが、そんな夜切君でも……」
「私は……死んだら悲しいと思いますよ」
夜切君の気持ちが理解出来たから、なんて思い上がった事を言うつもりはありません。
たった一日で夜切君の気持ちが全て理解出来るわけがありませんから。
ですが、夜切君が思ってくれる人は誰もいないと言うなら……私が夜切君の事を思いましょう。
家族でも、友人でもない、ただの隣の席の話し相手として……私が。
今度は夜切君の方が盛大にため息をつきました。
そして諦めたのか、抱き抱えていた仔犬を私に手渡しました。
私は仔犬をしっかりと抱きしめてあげました。
とても温かいです。
「今更だが……変わった奴だ」
いつの間にか、私達は横並びで歩いてました。
「それを夜切君が言いますか?」
「違いない。だが……」
照れ隠しのためか、そっぽを向いた夜切君は本当に聞こえるか聞こえないくらいの小声で、呟きました。
「……ありがとう」
最終回だと思ったか?
残念! まだ続くッ!!
(一度やってみたかっただけなので気にしないで下さい)




