そのじゅうろくです。
夜切君が突然の川へとダイブしました。
「何をやってるんですか夜切君!?」
私は慌てて上から川を覗き込みます。
するとそこには下流に向かって泳いでいる夜切君の姿が見えました。
夜切君が一体何がしたいのか全く分からないまま、夜切君を眺めていると、私の目にある物が映りました。
「あれは……!」
仔犬。
上から落ちてしまったのでしょうか、仔犬が流れていくのが見えました。
その仔犬の元に夜切君が向かっていくのを私は茫然と眺めていました。
「そこの犬、待ってろ。今、引き上げてやる」
ここの川はそこまで深くなく、足はつくようでした。
そのままキャンキャンと吠える仔犬を夜切君は両手で引き上げました。
「うっ……ずぶ濡れ。しかも体中、泥だらけだ」
そこでようやく我に帰った私は夜切君に向かって呼びかけます。
「だ、大丈夫ですか夜切君」
「俺は別に。それより仔犬の方はどうか分からん」
本当に大した事がなさそうな様子を見せる夜切君。
や、痩せ我慢とかじゃないですよね……?
夜切君は仔犬を抱え、川から這い出てきました。
「こ、この仔犬、随分と弱ってますよ」
「綿々、俺の服を。この犬に被せる」
「はいっ」
兎に角何か温める物を。夜切君もそう思ったのでしょう。私は言われた通りに夜切君が脱いでった服を夜切君に手渡します。
夜切君が仔犬の体を拭いている途中に私は尋ねてみました。
「あの……夜切君が川に飛び込んだのはこの仔犬を助けるためだったんですか?」
「他に何がある」
ごめんなさい。迸る思いが溢れてしまったか、○□本でも見つけたのかと思ってました。
「掠れるような鳴き声がしたかと思ったら、流されているのを見つけてな。川も浅そうだったから飛び込んでも大丈夫だと思った」
「流れが早かったか、もっと深かったら危なかったって事じゃないですか。危険だとは思わなかったんですか? それに助けるにしても何か他に方法があったでしょうに……」
「……気がついたら川に飛び込んでいた」
つまり考え無しだったというわけですか。
まったく……よくもそんな無茶が出来ますね。
目の前でやらかしてくれた夜切君に私は盛大にため息を漏らします。
「いいですか、夜切君。いくら仔犬を助けるためだと言っても、自分の命を粗末にするような真似はしてはいけません。万一の事があったらどうするんですか」
無事だったからいいものの、一歩間違えれば大惨事だったでしょう。
「……俺の命なら安いものだろう」
無神経とも呼べる夜切君のその一言に私は思わずカッとなりました。
「何を言ってるんですか! ふざけないで下さい!」




