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……そのひゃくじゅうろくだ。

「──好きです」


 綿々は確かにそう言った。

 俺を、好きだと、そう言った。

 どうしていいのか分からなかった。

 だから俺は本能のままに綿々を強く抱き締めた。

 休日の昼間の遊園地の広場。

 時間も場所もムードのへったくれもない場所で俺達は抱き合った。

 綿々の耳元で俺は囁いた。


「──俺もだ」


 それ以上の言葉は必要としなかった。

 綿々の腕にも力が込められ、離さないとばかりに俺を抱き締めてきた。

 触れ合う綿々の体は温かくて、体温が俺の体に移った。

 それだけで綿々からの思いが気持ちが伝わってくる。

 好きだと確かに思ってくれていることがはっきりと分かった。

 だから俺もそれを綿々を抱き締め返すことで好きだということを伝えた。


 綿々が顔を近づけてきた。

 作法に乗っ取り、俺は目を閉じた。

 そっと唇が重なった。

 俺は肩にかけた手に力を込めた。

 体と体が繋がるような感覚。

 出来るのなら、ずっと味わっていたかった。


 長い長い時間の間、唇の重ね合った俺達は互いに顔を見合わせると微笑みを浮かべた。


「……夕って呼んでもいいですか?」

「……俺も、ふわと呼んでいいか?」

「なら、同時に呼び合いましょう」

「分かった」



「──夕」

「──ふわ」



 ただ名前を呼び合っただけだというのに、顔は耳まで真っ赤に心臓はバクバクと高鳴った。


 俺の中で込み上げてくるこの感情は『恋』と呼ばれるものなんだろう。

 体が熱くて、胸が痛くなって、苦しくなって、本能に全てを任せたくなって。

 理性も、それ以外の感情も、全て吹き飛ばす。

 俺はそれを受け入れる。

 これからも、何年でも、いつだって。


 そして俺はこの時を永遠に忘れることはないだろう。

 俺とふわが結ばれたこの日を──。



 ──俺はずっとずっと忘れないで、覚えている。

 

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