……そのひゃくじゅういちだ。
「いい加減、自覚をするんだ。どうしてふわは君といる時が一番楽しそうにしている? どうしてふわは君と二人で出かけた? どうしてふわは事故の時、君の元を尋ねた?」
「それは……俺が綿々の友達だからで」
「違うっっ!!」
叱責に似た綿々兄の声が虚空に響いた。
「そんな理由……一つに決まってるだろう! 他にないだろう!」
あの時のように、綿々兄は俺の胸ぐらを掴みあげてきた。
ただし、違うのは綿々兄の感情。
これは決してやつあたりなんかではない。
それは分かる。
ただ……この感情は今まで知らない感情で、何故だか胸の辺りが熱くなった。
「気づけ! 気づいてやれよ! 応えてやれよ!」
気づく? 一体、何に?
「ふわが選んだのは君なんだ! だったら応えてやれよっっ!!」
綿々が俺を選んだ? それはどうしてだ?
「お願いだから……! 応えてやってくれよ……!」
どうして綿々兄は涙を流している?
俺には、分からない。
理解することが出来ない。
気持ちが悪い、感覚だった。
だから俺はそれを、胸に溜まった何かを消したくて、綿々兄に尋ねた。
「……どうして、だ?」
「そうじゃないと──僕が諦められないだろうがッ!!」
──体を貫くような衝撃が走った。
綿々兄は掴んだ腕の力を緩め、俺を離す。
「ふわだけじゃなく、僕も……君を認めたんだ。だからこそ、聞く」
「──君はふわの気持ちにどう応える?」
「……」
「その答えは直接本人に言ってやってくれ。その方が……ふわのためだ」
綿々兄は言うなり、踵を返してこっちを振り返ることはなかった。
まるで自分の用は済んだとばかりに。
だから俺をそれを見送りながら、綿々兄に向かって言う。
「……ああ、行ってくる」




