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番外編 そのじゅうはち。

「先輩、大丈夫ですか?」

「い、いや、割と大丈夫じゃなオロロロ……」


 この遊園地のマスコット、ノロマブタこと『ニートー君』を務めている先輩は『見せられないよ』な液体を床にぶちまけた。

 休憩室に入ってから先輩はずっとこんな調子だ。何かあったんだろうか?

 あたしはニートー君の対になるマスコットキャラクター、『ヤレルブタ』の頭を外し、テーブルに置くと先輩の背中をさすってやった。

 この仕事を始めて、付き合いが一番長いのが先輩だ。先輩には色々お世話になったし、ここで礼を返さないというのも失礼というものだ。まぁ、同じマスコットの仕事をやってるっていうのもあるんだけど……。

「助かるよ……津出川さん」

「いえ……でもこんなになっちゃって、一体どうしたんですか? 吐く程激しい動きをするようなことがあったとか?」

「うん、まぁ……一言で言うなら互いに譲れないものがあった、ってことさ」

「ああ、またいつものですか? 無理にニートー君のキャラを演じなくてもいいのに……」

 先輩はニートー君の着ぐるみを着ると、客に不快な思いをさせてまでニートー君のキャラを演じる。

 それで今回も客を怒らせて、こんな風になったんだと思う……多分。

「それは駄目だ。ニートー君はあくまでニートでクズなノロマブタなんだからね。客に不快な思いをさせないニートー君なんてそれはもう、ニートー君じゃない」

「いや、客を不快にするようならそれはもう、マスコットとして終わってるとあたしは思うんですけど……」

「客を不快にさせて何が悪いんだ! ぼくはニートー君なんだよ!? 人を不快にさせることが仕事のニートー君なんだよ!?」

 ……先輩。何かかっこいいこと言ってるように聞こえるけど、それは明らかに間違ってるわよ?

「……この仕事は確かに辛いよ。だけど、辛くても誰かがやらなくちゃいけないことだとぼくは思うんだ」

 語り出した! 何か先輩語り出した!

「ニートー君はそういう仕事だ。少なくても、ぼくはそう思ってる……!」

 先輩は拳を震わせ、天に向かって叫ぶ。



「そうだよ……ぼくが、ぼくたちが、ニートー君だ!!」


 ……あたし、このバイトもうやめようかな?


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