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……そのきゅうじゅうはちだ。

「……分かった。ではの」


 誰かと電話をしていたらしい萬が受話器を置き、ふぅと一息をついた。

「……誰からだったんだ?」

 そこへ俺はタイミングを見計らって萬の前へと現れる。

「ん? ああ、ちょっとした友人じゃよ」

「そうか」

「で、おぬしは儂に何か用か?」

「……ああ」

 俺は古海から貰ったペアチケットの一つを萬に差し出した。

 萬はそれを受け取ると、やがて目を丸くして驚く。

「これは……遊園地のチケット⁉︎」

「古か……クラスメートから貰ってな。都合が悪いらしい」

「……」

「? どうした?」

 萬はしばらく固まっていたかと思いきや、蒼色の瞳から涙を零した。

「なっ……! どうして泣く……⁉︎」

「ああ、すまん、すまん。……まさかおぬしのような変態甲斐性なしがこんな誘いをしてくれると夢にも思ってなかったのでな。つい……」

「……ブン殴っていいか?」

「乙女を殴るなんて、やはり変態甲斐性なしには人間の心というものがない──あいたっ⁉︎」

 懲りないようなので脳天にチョップを喰らわせてやった。

 誰が甲斐性なしだ、誰が。

「変態は否定せぬのじゃな」

「心を読むな。……そもそも変態は俺のアイデンティティーだ。悪口にもならない」

「そんなアイデンティティー、捨ててしまった方が良いと思うのじゃが……」

「……お前は俺が俺でなくなってもいいというつもりか?」

「変態行為をするくらいならその方がマシじゃな」

「人格を完全否定された……⁉︎」

 俺の人格とは一体……。

「それで、このチケットなんだが……」

「日曜日までに行かないと期限が切れるらしいの。つまり遊園地に行くのは今週の日曜日、というわけか」

「……理解が早くて助かる。日曜日までに準備だけはしておいてくれ」

「分かったのじゃ」



 トントン拍子に話がまとまる。

 俺はこの時……スムーズに話が進んでいくのに不審に思うべきだった。

 不審に思わなかったからこそ、萬が裏で口元を大きく歪ませていたのに気がつかなかったのだから。

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