そのきゅうじゅうろくです。
「ふーわー! いや、マイエンジェールッ!」
夏実さんと遊園地に行く約束を取り付けた後、居間でTVを見ていると陽気な声を発しながら、お兄ちゃんが帰って来ました。
「あ、お兄ちゃん。……エンジェルは恥ずかしいから止めて下さい」
それを人前で呼ばれたら顔から火が出る自信があります。
訂正を要求する私にうんうん、と頷くお兄ちゃん。
……この顔は絶対に分かっていませんね。
もしもお兄ちゃんが私のことをその呼び方で呼んだらどうしてくれましょう……?
私がそんなことを考えていると、お兄ちゃんが急に勢い良く迫ってきました。
「ふわ! 今週の日曜日に予定はある!? ないよね!?」
「え? ちょっ、ちょっと、いきなりどうしたんですかお兄ちゃん?」
か、顔が近いのでちょっと離れてくれると……。
そう言いたい私でしたが、肩を揺さぶられ、いうに言うことが出来ませんでした。
「ないんだよね!? 兎に角答えて!」
切羽詰まったようなお兄ちゃんの勢いに私は思考を働かせます。
「に、日曜日ですか……。はぁ、まぁ……特に何も──」
……その日は夏実さんとの遊園地の約束でしたね。
「──あ、ごめんなさいお兄ちゃん。日曜日には大事な用事があったんでした」
「………………へ?」
まさか私に用事があると思ってなかったのか、間の抜けた声をあげるお兄ちゃん。
「日曜日には用事があるんですお兄ちゃん」
「ヨ、ヨウジ? ハハッ、ナニヲ……」
ついにお兄ちゃんは片言言葉になったかと思うと、何故だか手元に目を落としていました。
? 何を見ているんでしょうか?
私がそんな呑気な風にしていたのはそこまででした。
「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………オワッタ」
「お兄ちゃーーんっ!?」
お兄ちゃんが白目を剥いて倒れ、私はその後の看病をしなくてはならなかったからです。




