そのきゅうじゅうよんです。
部活動見学、その帰りです。
「何だかんだで面白かったですね」
「あんた、よくそんな台詞を言えるわよね……」
何かと苦労が絶えなそうな蓮さんが疲れ切った表情を私に向けました。
私もこれでも苦労しているんですよ?
「で、あんたはどうするつもり?」
「部活動ですか? まだちょっと、決めかねてますね……」
色々ありましたからね。
「……ちがうわよ。私が言ってるのは夜切の事よ」
「え……?」
「うじうじしてるくらいなら、さっさと告白しちゃいなさいよ」
「む、むむむむむ無理ですよっ、そんなのっ!?」
告白とか、考えただけで頭が真っ白になりそうなんですよ!?
そういうのは……そう、もっと時間を置いてから……!
「時間を置いてどうするのよ。あんた、夜切にアプローチでも仕掛ける気? 出来るんならやってみなさいよ」
「弁当を作ったり、朝一緒に登校したりとかですか?」
「あの夜切よ? あんたの好意に気づかないまま、そのまま高校卒業……なんて事も有り得ると思うわよ」
「それは……」
……ないとは言い切れません。というより、その可能性は大いにあります。
相手は女心も分かっていない、鈍感の夜切君なのですから。
「アプローチが駄目なら……もう告白しかないでしょ?」
「ですが……」
「早くしないと……他の誰かに取られる可能性もあるのよ?」
「──っ!」
他の誰かに……夜切君が?
そんな事、考えた事すらありませんでした。
蓮さんは私を、真剣な目で見据えました。
「あたしは……動くなら今だと思うわよ。あんたがどうするかは、あんた次第だけどね」
「あ……」
「じゃあね。あたし、こっちだから」
私が向かう先とは逆方向に去る蓮さんを私はただ、ぼうっと見送りました。
三章終わりです。
次回から最終章、開幕です。




