そのいちです。
初めましてという方も、また会ったなという方も含めてこんにちは。白菜です。
まずはこの作品に興味を持っていただいたのか、暇つぶしに見てみようと思われたのか分かりませんが、とりあえずありがとうございます。
この作品は一話、600〜800字程度でお送りするプチ小説です。
活字だらけの小説で疲れている方にオススメのこの作品。
どうぞ、お楽しみください。
「今日は転校生を紹介する」
妙にがたいのいい体育系の担任の声と共に私は教壇の上へと立ち、自分の名前を口にする前に辺りを見渡します。
ある人は興味津々で私をじっと見ていたり、ある人は早く私に質問したいとばかりにうずうずしていました。
そんな中、ふと私は窓側席の一番奥にいる男子生徒に目がつきました。
その男子生徒は転校生が来た、というイベントがどうでもいいらしく、ぼぅと窓の外を眺めているのでした。
その時、私は「そんな人もいますか」と気にしてはいませんでした。
「綿々 ふわです。この学校には親の仕事の都合で転校する事になりました。ふつつか者ですが、三年間よろしくお願いしますね」
丁寧なお辞儀の後、クラス中から拍手が聞こえました。
ちゃんと噛まずに言えた事に私はほっと胸をなでおろします。
「質問等はHRが終わってからするように。綿々、お前の席はあそこだ」
そう言って岡山先生(担任です)が指をさした席は先程の男子生徒がいる席のちょうど隣でした。
「はい、分かりました」
愛想は大事です。岡山先生に向かって軽く微笑みながら、とことこと席まで移動します。
椅子に座り、隣を見ると、男子生徒は未だ窓の外をぼんやり眺めていました。
折角です。私は隣の席になったという事で声をかけてみる事にしました。
「綿々 ふわです。何を見ているんですか?」
男子生徒はやっと私に気づいたか、振り向くと、
「いや、何──」
私の顔を見ながら、真顔で大真面目に言葉を濁す事なく彼は言い放ったのです。
「──ただの賢者タイムだ」