その夜
『ふぅ~・・・ 久しぶりに一杯しゃべって、少しスッキリしたよ♪ ありがと兄ちゃん♪』
『・・・満足して貰えてなによりだ』
軽いトーンの壊龍の杖とは対照的に、すっかり疲れてしまった俺はぐったりしていた。
『まあまあ、兄ちゃん。オイラの話を聞いてくれたお礼に、一回だけ兄ちゃんにオイラを使う権利をあげるよ』
『ありがとう・・・』
実際に使うかどうか分からないけど、とりあえず貰える物は貰っておく。
多分何かの役に立つだろう・・・ でも、口約束で大丈夫か?
いざ使おうとして、バチッってされたらテンションガタ落ちになるだろう・・・。
契約書でも書いて・・・ 杖だし書けないか・・・ リリアに・・・ってダメだろうな。
そうだ! 杖の先端にインクを付けて書いたら・・・って、それは書いた人の契約じゃないか?
う~ん・・・。
『何か、兄ちゃんが難しく考えているようだけど、オイラの約束は絶対の約束だから大丈夫だよ』
『絶対の約束って?』
『約束を破ったら、オイラは消えるって事さ』
『それって・・・ 大丈夫か?』
『大丈夫じゃないから、この姿なんだけど・・・』
少し声が不機嫌になっている・・・。
魔神の契約の事か・・・。
一瞬頭を過ぎるが、更に不機嫌になりそうなため、すぐに違う事を考える。
『じゃあ、明日8時にハチ公前に集合で!って約束をして、目覚まし時計が壊れていたら、存在が消えるのか・・・ それは怖いな・・・』
『いや・・・ そんな軽い約束じゃ消えないよ・・・』
『それもそうか・・・ でも、待ち合わせ時間も大事だぞ?』
『そう? オイラは待ち合わせなんてした事無いから、分かんないよ。それよりもハチ公って何?』
『主をいつまでも待つ事ができる忠誠心を持った犬の事だ・・・』
『それってケルベロスの事?』
『ケルベロスって・・・ さっきの?』
『いや、魔王城にいるヤツだよ。あいつもオイラの元の持ち主の飼い犬で、子供の頃から一緒に育ったって言ってた気がするな~』
『何! その設定・・・ 倒し難くなるよ!』
『オイラに言われてもな~・・・ でも無理に倒さなくても、大人しくできる方法があるよ?』
『どうやるんだ?』
『頭を撫でるんだよ』
『撫でる前に喰われるわ!』
撫でるために、顔に近付いたらガブッ! ってやられるだろう・・・。
『じゃあ、火竜の骨でも投げてみたら? 追いかけてどっかに行くかもよ?』
『それって・・・ 大丈夫か?』
『さあ?』
『・・・』
たぶんダメだろうな・・・。
それじゃあ只の犬だろう・・・。
『それじゃあ、兄ちゃんそろそろ放してよ』
『・・・? あぁ そうだったな。じゃあな・・・』
『バイバ・・・』
杖から手を放すと、声が遠ざかっていくように消えていった。
杖との会話が終わった俺は、皆に内容を話した。
リリアとの風呂で忠誠を誓った話を除いて。
彼の名誉のためだからな・・・。
クリスは目を輝かせながら聞いており、アイシャはその様子を嬉しそうに眺めていた。
リリアはへぇ~ って感じで聞いていて、最後に「私も話してみたいですね~・・・」と少し寂しそうに呟いた・・・。
レイとアマネとカーラは何かを考えるように聞いていた。昔に戦った事がある相手の話だし、何か思う事があるのだろう・・・。
いつか聞けるといいが・・・。
話が終わると、少し早いが寝る事にした。
次の日は王国に帰る事になる。
クリスとアイシャは遺跡の調査もあるし、そろそろ帰らないといけない。
俺達は家の物を揃えたり、次の旅の準備もしないといけない。
俺は女性陣を部屋の近くまで送って、一人で自分の部屋に向かった。
今回も一人の夜になる・・・。
いいけどね・・・。
「ふぅ・・・」
部屋の扉の前に立つと軽い溜め息が漏れた。
「マスター? 溜め息なんかついて、どうかしたんですか?」
「!?」
急に背後から声を掛けられて、ビクッ ってなってしまった。
「カーラか・・・」
俺の後ろにはカーラがいつの間にか立っていた。
しかも、さっきまでの服装では無く、ゆったりとした浴衣のような格好で、シルクのように肌触りが良さそうな寝間着だった。
薄暗い所で見ると凄く、色っぽく見えてしまう・・・。
しかも、よく見るとカーラは下着を身に着けていないようだった。
最近ご無沙汰の俺は、そんな恰好で立っているカーラの胸の一点を凝視してしまう。
今日は一人でスルかな・・・。
そんな事を考えていると、カーラが近付いてきた。
「マスター・・・ 今日は私と・・・ してください」
「はい! よろこんで~!」
俺は言葉の意味を頭で理解していないが、体が反応して即答していた。
本能とは恐ろしいモノだ・・・。って違うか?
すみません。かなり遅れました・・・。
このひと月が忙しさのピークです・・・。
ふぅ~・・・ がんばります!




