魔王の杖
「元魔王って・・・? 何?」
「え~と~ 最初の魔王さん・・・? でしたっけ?」
リリアはカーラの方を見て問いかけているが、自分が貰った杖だよな・・・。
「そうです、魔神の腹心で・・・ 魔神が倒された後に、魔王を名乗ってモンスターを束ねていた人です」
「それって・・・ 凄い昔の話だよな? そんなのと、どこで会ったんだ?」
「確か昔の勇者一行が退治したって伝わってますけど・・・。実際は封印したみたいですね・・・」
「イヤイヤ、封印したらちゃんと後世に残しとかないと、大変な事になるんじゃないか?」
「1000年以上前の事ですから、伝える途中で内容が変わった可能性もありますね」
「あ~・・・ 伝言ゲームの様な感じか・・・」
実際には政治的な事も関わってそうだが・・・ まあそれはいいか。
「で、どこでその元魔王と会ったんだ? っていうか大丈夫だったのか?」
「大丈夫ですよ~ 『マルさん』っていって~ 良いお爺ちゃんでしたよ~♪」
「お爺ちゃんって・・・ 魔王だろ? しかも、マルさんって・・・」
「いえマスター、リリアの話では本当に人の良い老人だったようです」
「え・・・ そうなの?」
それでも、魔王ですよ? 悪い人の代表ですよ?
「恐らく長い間封印されていた事で、性格が丸くなったのではないでしょうか?」
「あー うん そうかもね・・・」
良い人認定されている、お爺ちゃんは魔王であっても関係無いようだ。しかも、俺が会った事無い人だから、俺の感覚で話してもズレがありそうだ。
「それでどこで会ったんだ?」
「それは~ ユカザード大陸の遺跡です~」
「あ~ 太古の遺跡か?」
「違いますよ~」
「じゃあ、霊峰シフか?」
「はい~ そうです~」
「それなら、山登りも大変そうだな・・・」
山ばかりのユカザード大陸で、最高峰の山が『霊峰シフ』になっている。山頂には遺跡がありドラゴン達の住処となっている。
当然その遺跡に行くには、山を登って行く必要がある。
俺もその内行く事になるが、山登りの経験が殆ど無いので、それを考えると少し憂鬱になりそうだ・・・。
「登りませんよ~ 地下の遺跡です~」
「え・・・ 地下? そんなのあったっけ?」
ゲームをプレイしていた時にも、霊峰シフの地下ダンジョンなんて行った事も無いし、噂にも出た記憶が無い。
「今は~ 多分入れませんよ~? 私達が出る時に~ 元魔王さんが封印していましたから~」
「なるほど・・・ それなら知らないわけだ」
リリアが旅をしていたのは、700年ぐらい前になるから、今のダンジョンとは違う所もあったのだろう。
それにしても、俺が知っているゲームの世界と違っている所が多いな・・・。知らない間にバージョンアップでもしたのだろうか?
元・・・ 魔王か・・・ どっかでバイトとかしてないよな・・・。
イヤイヤ、それはないだろう。流石に。
『・・・い。・・ーい』
「ん?」
何か聞こえた気がしたが?
『おーい、おーい』
確かに声が聞こえた! 知らない声だ・・・
キョロキョロ辺りを見渡すが誰も居ない・・・。
『いつまでオイラを持ってるんだ! バチッ! っといくぞ!』
ん? 持つ・・・? バチッ・・・? ってもしかして!
俺は思い当たった物をパッと見た!
手に持っていた杖の装飾だった骨の瞳が赤から青に変わっていた!
「あっ ヤバッ!」
バチッ!
杖から雷が迸り、慌てて手を放した。
「いっ! た~~~~~~!」
一瞬手を放すのが遅れて、雷が俺の右手を痺れさせる。
真冬の静電気より何倍も痛い・・・。
「ご主人様!」
「主様!」
「マスター!」
「アキラさん!」
「キュイ!」
「アキラさん!」
「あらあら~」
全員が俺の元へ駆け寄ってくる。
「だ 大丈夫だ・・・ ちょっと痺れただけみたい」
「本当ですか?」
レイが心配そうに俺を覗き込む。
「ああ、杖が警告をしてくれたんだが、気付くのが遅れてしまった」
「杖が、ですか?」
「そのようだ、長い事持っていたから、嫌がられたようだ」
「その杖は私達のような武器なのでしょうか?」
「さあ、どうなのだろう?」
レイと杖の事を話していると、手の痺れが治まってきた。
動くようになってきた手を、握ったり開いたりしていると、リリアが杖に近付いていった。
俺が離した杖は、青く瞳を輝かせたまま宙に浮いていた。
「大丈夫か?」
「はい~ 私は~ 大丈夫ですよ~」
そう言って宙に浮いていた杖を、大事そうに掴んだ。
青かった瞳が赤に戻り、いつもの状態になった。
「それにしても~ アキラさんは~ この杖の声が聞こえるんですね~?」
「聞こえるって事は、リリアも聞こえるのか?」
「私は~ 聞こえませんよ~」
「え!? そうなの!」
「はい~ 元魔王さんが~ この杖は話すって~ 言ってました~」
流石は魔王の使う杖って事なのだろうか?
それにしても、この杖はレイ達と何か関係があるのだろうか・・・?
またまた遅くなりました。
年末年始に溜めたいと思います。




