リリアの杖
何とか魔瘴石の封印が終わった。
魔瘴石があった場所だけ草が生えておらず、何かがそこにあったとしか分からない状態になっていた。
もしゲーム内でそこを調べると、『何かが置かれていたようだ・・・』とか表示されて、何かのイベントに使用されそうな見た目になっている。
実際には封印のイベント?が終わったので、何も起こらないがな。たぶん・・・。
それにしても、予想よりも強力なモンスターであるケルベロスが出現して少し驚いたが、無事に倒せて良かった。
そういえば・・・ リリアは以前に封印をした時は、戦闘中に結界を張って寝たらしいが・・・
最初に話を聞いた時にも思ったんだが、なかなかの強い心臓をしているようだ・・・。
「これでもう封印は終わったのか?」
「はい~ これで~ 大丈夫です~」
「解けたりしないのですか?」
クリスはリリアに問いかける。
王女としてモンスターがまた発生する事態は避けたい事だから、流石に心配になっているようだ。
「それは~ 魔王さんぐらいの~ 力を持った人が~ 来たら~ 解けると思います~」
「来なかったら大丈夫なのか?」
「そのままなら~ たぶん~ 無限? ですかね~」
「無限・・・? 大丈夫か?」
無限と言われても、全然ピンとこない。
しかも疑問形の返事だった。
だが流石に魔王自身がここに来て、わざわざ封印を解きに来ないから大丈夫と考えていいだろう・・・。
なにせ俺は封印の魔法を見ても、何をやっていたのか全く分からなかった。
無数の魔法陣を見て「おお! スゲー!」としか思わなかった。
ゲームのムービーシーンは初見では感動を覚えるが、周回プレイになるとスキップされる事がほとんどだろう・・・。
ただ実際に体験すると、凄い達成感と安堵感が大きくて何とも言えない、やり遂げた感じがする。
この作業をスキップする事は無いだろう。
できないけど・・・。
「まあ・・・ それは良いとして、なんで魔王なんだ? 強力な魔法使いとかはダメなのか?」
「それは~ この杖を~ 使える人しか~ 解けませんよ~」
「その杖? 何か不安を覚えるような杖だが・・・」
杖の頭の装飾は小さな龍の頭蓋骨が付いている形をしていて、瞳のあった所が怪しく赤く光っていた。
パッと見は趣味の悪い杖だな・・・ と思うが、赤く光っている瞳をみると、何か悪い事が起きそうな嫌な感じがしてくる・・・。
「もしかして・・・ その杖って、呪われてるんじゃないか?」
「マスター おしいです」
カーラは知っているようで、リリアの代わりに返事をした。
「おしいって・・・ そんなの装備して大丈夫か?」
「まあ、呪いっていうか、持ち主を選ぶ杖ですから・・・ 恐らくマスターでも装備できないと思いますよ?」
「ホントか? 試してみるか・・・」
「え~っと・・・ 大丈夫だと思いますけど・・・ たぶん、痛いですよ?」
「え!? 痛いの?」
「大丈夫ですよ~? 私は痛くなかったですから~」
何だかあまり安心できない言葉だが・・・。
ちょっとだけなら・・・。
後日、あの時の選択が間違いだったと思い知る・・・
『絶対に杖に触るべきではなかった』
と・・・。
・・・
なんてナレーションが流れている感じがするが・・・。
「じゃあ触るぞ?」
「はい~ いいですよ~」
リリアが持っている杖に指の先でチョンチョンと触る・・・。
「・・・大丈夫だな?」
「マスター・・・ もうちょっとガッ って掴んでも大丈夫ですよ?」
「いや・・・ カーラが痛いって言うから、流石に警戒するだろ?」
「静電気みたいな感じですよ! きっと! (たぶん・・・)」
「最後に『たぶん』って言わなかったか?」
「いえ、気のせいですよ! 気のせい!」
余計に不安が増した気がするが、静電気なら指先でバチッ っときてそうだから、大丈夫っぽいかな・・・。
「よし・・・」
少し気合を入れて、ガシッ とは行かず、スッ っと杖を掴んだ・・・。
「お! 大丈夫か?」
何も起こらずに杖は俺の手に納まった・・・。
その杖は『壊龍の杖(魔王専用)』と俺の目に映った・・・。
この武器って確か・・・。
開発段階で存在していたが、諸事情により搭載されずにデータだけの存在になったと・・・。
どこかのチーターがデータから掘り出して使用していたが、あまりの強さに一瞬でチートだとバレて、通報され、すぐにアカBANされた。と聞いた事がある・・・。
あくまでネットの噂だったが、何個か動画がUPされていたので見た事があった。
正に無双状態だった・・・。
超魔王が使う究極の闇魔法をぶっ放し放題で、モンスターや他のプレイヤーを薙ぎ払っていた。
そして、データからもすぐに消されたらしい・・・。
何でそんな武器をリリアが持っているんだ?
まさか! チーターなのか!?
「リリアは・・・ どうしてこの杖を持っているんだ?」
「人から~ 貰いました~」
人ってそいつがチーターか?
「人から? 魔王の杖を?」
「はい~ 魔王さんから~ もらいました~」
「なるほど・・・ 魔王本人から・・・ え!? 魔王から? 貰った!?」
「正確には~ 元魔王さんですけど~?」
「元? 魔王?」
いやいや・・・ そんなイベントあったか?
全くわけが分からないよ・・・。




