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魔瘴石の封印

 頭半分が破壊されて、若干スプラッタなモンスターになったケルベロスの残った方の瞳が俺を睨む。

 かなりのダメージを負って怒っているのか、その瞳は血走っていた。

 他の頭も唸り声を上げて、俺達全員を視界に入れているような素振りを見せている。

 俺達が様子を見ていると、3つの口から同時にブレスが放たれた。


 鉄さえも溶かしてしまう超高温の『獄炎(ごくえん)』が、ケルベロスの姿を隠すように巨大な壁となり、液体窒素とほぼ同じ超低温の冷気『獄氷(ごくひょう)』で作られた無数の氷の槍が降り注ぎ、縄文杉の様な巨木を簡単に破壊できる雷『獄雷(ごくらい)』が炎の壁の中で荒れ狂っている。


 目の前で繰り広げられる、炎と氷と雷の狂喜乱舞は、並みの冒険者では死を覚悟して成す術無く呆然と佇むしか無いだろう・・・。

 だが、俺達にはそんな攻撃など簡単に無効化する事ができる。

 轟音と共に迫るケルベロスの三重ブレスの前に立ちふさがるのは、神刀を構えたアマネだった。


 先ほど単発で放たれた獄炎と同じように、あっさりとブレスを斬りつけて無効化していく。

 炎と氷と雷が作りだした轟音が収まり、ブレスの勢いがなくなってきた。

 アマネはチャンスと思い、ケルベロスに直接斬りかかろうと、神刀を構え直した所で突然膝を着いた・・・。


「え・・・?」

 何が起きたのか分からずに、アマネの方へ近付くと、頭を押さえて苦しそうにしていた。


「どうした・・・・!?」

 アマネに声を掛けて近付くと俺は気付いた・・・。

 微かに聞こえてくる音に・・・。


『ウォーーーーン』

『ウォーーーーン』

『ウォーーーーン』

 聞こえてきたのは、狼や犬がする遠吠えの声だった。

 声の大きさは小さく、ブレスの轟音にかき消されて、聞き取りにくいのだが確実に遠吠えをしていた。

 音の高さが違う遠吠えが3つ響いていた。

 その3つの音が互いに増幅し合い、高められた音の波が衝撃に変わり頭に響いてくる。

 始めは目眩を起こしたかのように平行感覚がおかしくなり、徐々に頭痛がひどくなってくる。

 そして、立っているのが困難になる・・・。


 最もケルベロスに近い位置にいたアマネは、既に膝を着いて何とかケルベロスの方を見ている状態だ。

 アマネに近付いていた俺は、少し頭痛がする程度でまだ耐えられそうだ。

 レイは魔剣を構えているが、少し辛そうな顔をしている。

 リリアは座り込んで耳を押さえている。

 クリスとアイシャはマコちゃんが造った防御膜に覆われて凌いでいた。

 カーラは魔杖を構えて何か魔法を使う素振りを見せていた。

 俺がプレイしていたゲーム内では、『遠吠え(強)』を防ぐのは耐性が付いた防具を装備していたが、魔法で何とかできるものでは無かったはずだが?

 そう思っていると、カーラが何かを唱えた。


 その瞬間に一切の音が消えた・・・。


 僅かに残っていたブレスの音も・・・。

 ケルベロスが遠吠えをしている音も・・・。

 全くの無音状態だった。


 魔法を使ったカーラは俺に目で合図を送ったように見えた。

 今まで体験した事が無かったが、恐らくアイコンタクトと呼ばれる行為だと思う・・・。

 体験した事が無い俺は、相手の言いたい事が目を見たら分かると聞いていたが、あまり信じていなかった。

 ただ、カーラの目を見た瞬間に何を言っているのが分かった気がした・・・。


 音が消えて頭痛などの不快感が消えた俺は、膝を着いていたアマネに近付き目を合わせた。

 俺と目を合わせたアマネは、俺に神刀を渡し刀身に手を触れて同化をする。

 そして、遠吠えが無効化された事に気が付いていないケルベロスに接近し、水を纏った一刀を浴びせる・・・。


 比類なき切れ味を持った神刀アマノムラクモノツルギの一刀は、殆ど抵抗無くケルベロスを切り裂いた。


 斬られた瞬間には断末魔を吐いたかもしれないが、無音の空間では何も聞こえずに、胴体から頭にかけて真っ二つにされたケルベロスは消えていった・・・。

 ケルベロスが完全に消え去ると音が戻ってきた。


「封印しま~す!」

 思わぬ強敵が現れて、魔瘴石の封印を忘れていたが、リリアの一言で思い出した。


「・・・頼む!」

「は~い!」

 いつもの感じで返事をしたリリアは、禍々しい杖を構えて封印を始めた・・・。

 魔法陣が魔瘴石の真下に現れ、次には真上、そして左、右、右下・・・・・・・・。

 数え切れない程の魔法陣が展開されて、円形になって魔瘴石を覆っていく。

 無数の魔法陣に囲まれて、完全な球体に見える魔瘴石の周囲五か所に、メイド二人が楔を地面に突き立てた。

 打たれた楔からは紐のような物が伸びて、地面と魔瘴石を繋止めていた。


「ふうい~ん!!」

 リリアが叫ぶと楔が輝き、地面に吸い込まれていった。

 それと同時に魔瘴石も楔に引っ張られるように、地面に消えていった・・・。


「は~い! 終わりましたよ~ お疲れさまでした~」

 先ほどの高度な封印魔法を無かった事にしそうなぐらいの、いつもの間延びしたリリアのトーンで脱力しそうになるが、その様子でやっと終わったと思わせる安堵感があった。

遅くなりました。

どうやら1~2週間に1話のペースで投稿になりそうです。

気長にお待ちください。

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