迷いの森
魔瘴石の封印をするために、森の前にやって来た。
この前は正解ルートを通って魔法植物を採取しただけで簡単な場所だった。
だが今回はリリアとメイド2人に犬1匹が加わっていた。
そもそも犬って何のために連れてきたんだ?
「とりあえず森に着いたが、どこに魔瘴石はあるんだ?」
「それは~ 道を間違えた時に~ モンスターが~ 沢山いる部屋に飛ばされますよね~?」
「そうだな、確かそこのモンスターを全滅すると入口へ戻されたはずだが?」
「はいです~ それで~ そこの~ 強制転送魔法を~ 解除して~ 周りを探します~」
「その近くにあるのか?」
「はい~ このメイド達と~ この犬が探してくれます~」
リリアの言葉にメイド二人は一礼をし、犬は「ワン」と鳴いた。
「探すって、どうやってするんだ?」
「え~っと~ この犬が「ワン!」と鳴いて、このメイド達が~ 返ってきた音を聞いて~ 見つけます~」
「・・・・・・・なるほど」
よく分からん!
まぁ、場所が分かる事は判ったので良しとしておこう!
と、そうそうに理解する事を諦めた俺だったが、クリスとアイシャは『?』という顔をしていた。
世の中には知らなくても良い事があるんだよ・・・ ってそれは違うか?
リアルでインターネットという、情報が溢れている世界の事を知っていると、全ての事を理解するのは不可能だと判ってくるからな・・・。 デマとかもあるし・・・。
昔ゲームで何回も騙された記憶が甦る・・・ 理不尽なイベントに回避行動があるという情報に踊らされて、それがデマと分かった時の衝撃といったら・・・。
思い出したら悲しくなってくるな。
何か凄く話が逸れたが、欲しいと思う情報を手に入れても、理解するには大変な努力が必要という訳だ。
それに俺達がする事はもう分かっているから、その行動をとるとしよう。
「一つ~ 注意してください~」
「ん?」
「私の~ 準備ができるまで~ モンスターを、全滅しないでくださいね~」
「あ~ そうか。魔法で一掃したらダメなのか・・・」
全滅させないように戦うのは面倒だな・・・。
「まあ、行ってみるか・・・」
そう言って、森の中へ進んで行った。
森に入ってすぐに、右の道へ進む。
正規ルートでは無い道へ進んだ俺達は、一瞬にしてモンスターハウスへ放り込まれた。
周りの景色が一変して、薄く霧がかかった空間になった。
そして、霧の向こう側には無数のモンスターが蠢いていた。
魔法で一掃するのは簡単だが、時間を稼ぎつつモンスター退治は骨が折れそうだ・・・。
「みんな危なくなったら言ってくれ! 魔法でモンスターを一掃して仕切り直しをする!」
「「「はい!」」」
俺の注意に全員が答える。
それが合図のように、リリアは持っていた杖を地面に突き刺して、魔法陣を展開させる。
ヨシ! ここからが勝負だな。見た限り大したモンスターは居ないが、結構な数が見える。
全部で30匹ほどだろうか? 中には魔法や遠距離攻撃をしてくるモンスターも居るので、死角から狙われないように注意をする必要がある。
俺はサポートに徹して、全体を見た方が良さそうだな・・・。
そう思いながら、リリアの方を見ると魔法陣が消えていく所だった。
霧の向こう側に居たモンスターが徐々に近づいて来て、もうすぐ戦闘が始まる・・・。
「みなさ~ん! 終わりましたよ~。 後は~ ガンガンやっちゃってください~」
「え・・・? 終わったの?」
「? はい~? 終わりましたよ~?」
「・・・って、今はモンスターが!」
モンスターの方を見ると、かなり接近されていた。薄っすらと構えている姿が見えるモンスターも居る。
すぐにも魔法が飛んできそうだった。
「みなさ~ん! 危ないですよ~! 私が~ 行きま~す! ひっさつ~ しょうか~ん! めいどらんぶ~!」
「必殺!? 召喚!? 冥土乱舞!?」
全く聞いた事が無い魔法? をリリアが使ったようだった。
リリアの言葉が終わると、上空に大きな魔法陣が現れて、空から無数の何かが降ってきた。
グォォォォォォ・・・・
霧の向こう側に居るモンスターが、唸り声を上げて崩れ落ちたのが分かった・・・。
そして、霧が晴れてくると、そこに立っていたのは、20人ほどの(元)魔動メイド達だった・・・。
高レベルの戦闘能力を持ったメイド達が、暗殺者のように空の死角から一斉に攻撃を仕掛けるなんて・・・ 恐ろしい魔法だ・・・。
正に、『必殺召喚メイド乱舞』だな・・・。
戦闘は終わっていたが、リリア以外の全員がポカーンとしていた。
召喚されたメイド達が近付いてきて、リリアに一礼して転送されると思ったが、そのまま歩いて城の方へ戻って行った。
「呼びっぱなしかよ!」
その光景に思わずツッコんでしまった。
「まだ~ 未完成なので~ 仕方無いです~」
俺の反射的なツッコミに、律儀に回答をするリリアを見て、全員のポカーン状態が回復した。
ポカーン状態は直ったが、戦闘をするにはちょっと待った方が良さそうだったので、少しその場で休憩を取る事にした。
無理は禁物だ・・・。




